未上場優良企業大塚製薬の資本関係(アップデート)


6月も終わりに近づき、3月決算会社の有価証券報告書が続々とEDINETで公開されているので、半年前に調べた大塚製薬の資本関係について情報をアップデートしてみた。

さて、前回調べた時のおさらいから。

○大塚製薬グループには未上場ながら有価証券報告書を提出している会社がある
・大塚製薬株式会社
・大塚化学ホールディングス株式会社
・大鵬薬品株式会社

○大塚製薬グループには上場企業もある
・アース製薬株式会社
・ニチバン株式会社
・株式会社阿波銀行 出資比率は小さくグループ扱いはされていないが大塚製薬グループが筆頭株


次に今回調べてわかった前回の見落とし。

・株式会社阿波銀行については、大塚製薬、大塚製薬工場、大塚倉庫、大鵬薬品の4社が共同で大量保有報告書を出している。その他、大塚化学ホールディングスも少し保有している。大量保有報告書と有価証券報告書(大株主の状況、有価証券明細表等)から判明する保有比率は合計で5.95%である。
・大塚製薬は、東証1部上場企業である栄研化学株式会社の8.41%を保有しており筆頭株主
・アース製薬は、東証2部上場企業であるフマキラー株式会社の9.08%を保有しており筆頭株主


次に今回調べてわかった直近の動き。
・大塚製薬は第三者割当増資を予定している。当該増資の概要は次のとおり。
 -取締役会決議&株主総会決議 6月25日
 -増資株式数 1,400千株
 -増資額 23,968百万円(1株あたり17,120円)
 -払込期日 7月7日
 -割当先 大塚製薬従業員持株会、野村信託銀行株式会社(大塚グループ従業員持株会信託口)、グループ各社役員等(177人)

・大塚製薬は株式移転を予定している。
 -概要 株式移転により設立される大塚ホールディングス株式会社が大塚製薬の100%親会社となる
 -取締役会決議 6月7日
 -株主総会決議 6月25日
 -株式移転による持株会社設立日 7月8日


以上はEDINETにより一般に公開されている情報である。

ところで第三者割当増資の株価が凄い。1株当りの連結純資産が38,132円、1株当りの連結純利益が4,692円であるから、PBR0.4倍、PER3.6倍になる。総会の特別決議を経ているからいいんだろうけど、今回の増資を引き受ける従業員、役員の方々はお得だよなあ。

それから今回の増資で目を引くのは、割当先にいる野村信託銀行株式会社(大塚グループ従業員持株会信託口)という長い名前の存在。届出書に記載された説明によれば、これは「信託型従業員持株インセンティブ・プラン」という野村が開発したスキームでESOP(Employee Stock Ownership Plan)の変形版らしい。この仕組みを使うと、従業員持株会は将来、今回の増資株価+αくらいの株価で信託から株式を買い付けることができる。ちょっと乱暴な表現をすると、持株会に対してストックオプションを付与したのと似たような効果があるだろう。あとは、安定株主作りにも有効だろう。今回で言えば、目先の現金を持っていない従業員持株会を突然6%弱の大株主にすることができるわけだ。もちろん、厳密には信託が株主になるのであって従業員持株会が株主になるわけではないのだが、「受益者の代表として選定された信託管理人が議決権行使等、信託財産の管理の指図を行います。」とのことなので、議決権の帰属先としては実質的に従業員持株会が株主になったのと同様の効果があるだろう。

その効果を考えると、こういうスキームに興味を示す企業は少なくないのではないかと思われる。一方で、このスキームを実際に導入しようとした際に障壁になるのが、多分、コストの問題だ。信託が借り入れを起こすので金利が必要になるということと、信託の管理をする信託銀行に事務手数料を支払わなくてはならない。したがって、信託設定後は株価が信託設定時よりもかなり高い水準で推移し続けるということが絶対の前提となる。だから「うちの株価、最近かなり安くなっているから、あのESOPもどきを使って持株会の将来の買付株価を今の株価で固定しちゃえ!」みたいな感じで気軽に導入できるものでもない。大塚製薬という優良な未上場企業だからこそ利用できるスキームだ。

増資の払込期日が7月7日で、株式移転の期日が7月8日だから、持株会社の株主構成は増資後の株主構成ということになる。それから、株式移転にあたっては自己株式には持株会社の株式が割当てられない。なので、今回の増資と株式移転が終わると大塚ホールディングスの株主構成は下記のような感じになると推測される。

株主 株式数(千株) 割合
増資&株式移転前 増資&株式移転 増資&株式移転後 増資&株式移転後
大塚化学ホールディングス株式会社 2,066 - 2,066 13.8%
大塚製薬社員持株会 559 442 1,001 6.7%
野村信託銀行株式会社(大塚グループ従業員持株会信託口) - 870 870 5.8%
大塚家個人及び財団 590 - 590 3.9%
野村ホールディングス株式会社 529 - 529 3.5%
株式会社阿波銀行 248 - 248 1.7%
株式会社りそな銀行 228 - 228 1.5%
グループ各社役員等(177人) 109 89 197 1.3%
自己株式 28 △28 - -%
その他 9,225 - 9,225 61.7%
合計 13,582 1,372 14,954 100.0%

持株会社設立後は、どんな動きをするのでしょうか?興味深いですね。
           

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