2008年3月アーカイブ

いい加減しつこいかなと思いつつ、If today were the last day of my lifehave the courage to follow your heart and intuitionに引き続き、スティーブジョブズのスピーチからの引用。さすがにこれが最後になるけれど。

点と点をつないだら線になるっていうだけの話なんだけれども、それを人生に重ね合わせて考えると未来への漠然とした希望が湧いてくる。僕は飽きっぽいところがあって、いくつかの点をバラバラに置きながら人生を歩んできたように思う。でも、ジョブズのスピーチを聞くと、いつの日かバラバラに置いてきた点が1つに結実し、すなわち、僕が過去にやってきたいろいろなことが1つにつながり、大きな何かを成し遂げる瞬間、そんな時が来るのを信じれるようになった。
Again, you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.

スティーブ・ジョブズがスタンフォードの卒業式で行なった有名なスピーチだが、聴けば聴くほど心に沁みるフレーズに溢れている。以前書いたIf today were the last day of my lifeはそのひとつ。久しぶりにこのスピーチを聞いていて印象に残ったのは次のフレーズ。前の会社を辞めて独立しようと考えたのは、きっとこういうことなのだろう。今更ながらに勇気づけられた。

Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma — which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.
21世紀の錬金術:Web2.0バブルで一儲けする方法というエントリを読んだ。おもしろいので、架空のA社を舞台とした錬金術に関連して、笑った人、泣いた人をまとめてみた。なお、本エントリーは架空のA社を題材としたものであり、実在する企業、団体、個人とは一切関係ありません。

■笑った人
・錬金術で儲けた、ブロガーな若社長が率いる広告代理店や夢手帳な社長が率いる“ネット”企業
・引受手数料を稼いだ主幹事証券会社(メガバンク系)
・オフィススペースを貸すことでA社の未公開株と良いイメージを得た某大学
・錬金術師達に見捨てられ困っているA社に近寄り、子会社を売りつけた元祖“ヒカリ”の錬金術師
・第三者割当増資と新株予約権を組み合わせた不思議なスキームを編み出した欧州系錬金術師

■泣いた人
・カラクリに気づかずに投資して損した株主
・カラクリを知りながら投資したけど、逃げ遅れて損した株主
・A社の輝かしい未来を信じて入社したもののリストラにあった新卒社員たち
・可愛がっていた新卒社員たちのリストラに憤り、ブログで不満をぶちまけて社会的信用を失った採用担当者(参考

■そのほか
・御輿に乗って錬金術の舞台で踊り続けたA社経営者。お金と一時的な名声は得たけど、悪評も積み上がってしまった。
・A社救済に乗り出した商店街。体育会系銀行マンでMBAな社長の真意はよくわからない。商店街社長の厳しい規律に接して、A社経営者が更生するかどうか要注目。
ライト、ついてますか―問題発見の人間学


問題を解く前に、「問題は何か?」ということをを徹底的に考えることの重要性を解説した本。

ある問題が与えられた時に、それを見る視点を変えてみたり、問題を切り取る切り口を変えてみたり、評価軸を変えてみたりすることによって、問題を再定義し直しながら、本質的な問題に迫る様子を短編の物語を使いながら解説してある。

そいういった思考パターンを身につけているかどうか、実践することができるかどうかで、問題解決の生産性が大きく違ってくる。ものごとを進めていく上で、「本質的問題は何か?」と考えてから手を動かした方がいいよね、という話。

この本で若干残念なのは、文章が読みにくいところ。日本語訳があまりうまくないのだろうな、ということが推測される。おそらく、原書はユーモアが溢れる本なのだろうけれど、この読みにくい文章を辿っていると、そういうおもしろさは半減している。もしかして、英語の原文を読んだほうが内容を理解しやすいし、おもしろい可能性がある。

著者であるワインバーグの本としては、コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学もなななかのオススメ。
少し前に株主優待券の会計処理:引当金計上は必要か?というエントリを書いたのだが、「株主優待引当金」というキーワードで検索すると当該エントリーが比較的上に表示されるので、かなり多くの人に読んでいただいたようで、本ブログの中でもPVが多い記事のひとつだ。

ただ、「株主優待引当金」みたいなキーワードで検索する人は、実務で引当計上をするかどうかを検討しているようなケースが多いと推測され、僕のような個人会計士の勝手な見解が書きなぐってあるだけのページを見て、きっとガッカリしていることだろう。その点、検索結果で一番上に出てくるビジネス法務の部屋さんの株主優待券の会計処理は、内容も濃いし読んでいて役に立つ。そんな感じで、まあ心を痛めていた(笑)ので、少しは役立つコンテンツをつくろうかなということで、株主優待引当金を計上している企業がどれくらいあるのか調べてみた。

データソースはEDINETに本日(2008年3月20日)より前1年間に提出された有価証券報告書。「株主優待引当金」というキーワードで引っかかったところ。想像していたよりも引当金計上している企業数が少ない印象だ。会社規模が違うから単純な比較はできないけど、ワタミとかサイゼリヤの引当金金額はそこそこ大きいけれど、他の会社の引当金額はそんなに大したことがないという印象だ。資産総額とかも、一緒に調べればよかったとちょっと反省。

余談だけど、EDINETがXBRL対応で新しくなったので、サーバーが強くなったのか閲覧スピードが非常に快適になった。というか、ここ数ヶ月、リニューアル前のEDINETの重さが酷すぎただけだけど。

会社名 事業内容 株主優待内容 引当金計上額
(百万円)
決算期
株式会社篠崎屋 豆腐等の製造、卸、小売 自社商品優待券 9 2007.9
日本乾溜工業株式会社 交通安全施設・法面・景観等の工事の施工等 全国共通図書カード 1 2007.9
株式会社大庄 居酒屋「庄や」等の運営 優待飲食券または産地直送の特産品 74 2007.8
株式会社サイゼリヤ イタリアンレストラン「サイゼリヤ」等の運営 自社割引優待券、自社食事優待券 145 2007.8
株式会社ノエル 不動産の仕入・販売、開発・分譲、賃貸仲介、及び売買仲介等 ギフトセット等から選択 62 2007.8
株式会社ゴルフパートナー ゴルフ用品の小売 自社買物券 3 2007.5
株式会社銚子丸 回転すし店の運営 自社優待飲食券 8 2007.5
株式会社グローバルアクト 和食レストラン「相撲茶屋ちゃんこ江戸沢」等の運営 グループ優待飲食券 28 2007.3
株式会社日本システムディベロップメント システムソリューション及び人材派遣 Webサイト上で優待商品を選択 16 2007.3
株式会社ヤマノホールディングス  和装品等の販売及び美容室の運営 自社買物券 4 2007.3
株式会社アイ・ビー・イー 株式会社 アイ・ビー・イー 株主企業が運営するホテルの宿泊券 4 2007.3
株式会社銀座ルノアール 喫茶店「銀座ルノアール」等の運営 自社優待飲食券 10 2007.3
ワタミ株式会社 居酒屋「和民」等の運営 自社優待飲食券 161 2007.3
株式会社ワイズテーブルコーポレーション 高級レストラン「XEX」等の運営 自社優待飲食券又はギフト 13 2007.2
株式会社タスコシステム 「北前そば高田屋」等の運営 自社優待飲食券又はギフト 142 2006.12
地頭力を鍛える

コンサルタント的な思考方法を手っ取り早く容易に理解できる本である。「日本全国に電信柱は何本あるか」とか、コンサル会社の入社面接で問われるような問題、フェルミ推定と言うらしい、をテーマに“地頭のよさ”を定義し、解説してある。

「地頭力」を構成する要素として、仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力の3つの思考力と、それを支える論理思考力、直観力、知的好奇心という基礎について、それぞれ丁寧に解説がなされている。

さすがにコンサルタントが書いているだけあって、本の全体的な論理構成がしっかり組み立てられているので、理解しやすいし読みやすい。読みやすいからといって、決してレベルが低いというわけではない、本書に書かれている内容を確実に実践できている人というのは多くはないだろう。そういう意味で、問題解決系の初心者から中級者くらいまで、幅広く適した本だ。
先日書いた優先株という名のMSCBというエントリの閲覧数がかなり多かったので、転換社債型新株予約権付社債(以下、転換社債と略す)について考えてみた。ここでは単純化のために、転換価格が変動するMoving Strikeではなくて、転換価格が社債発行時に固定されているものについて考えてみる。

転換社債をその要素に分解してみると次のようになる。

転換社債 = 社債 + コールオプションの売り

何で普通の社債を発行しないのかといえば、コールオプションの売りポジションからもたらされるプレミアムを使って、社債のクーポン部分を小さく抑えようということだ。転換社債に対する投資家は、社債に投資したことに加え、コールオプションを買ったことになる。当然、オプションは価値を持っているから、そのオプションの価値の分だけ、社債部分の利息は小さくてもよいということになる。

しかし、クーポンが小さくなることによって表面上の負債コストは小さくなるが、オプションの売りポジションから自己資本側の資本コストが発生している。投資家が転換社債を株式に転換する、すなわちオプションを行使するということは、その権利行使時点における市場の株価に比して転換価額の方が有利だということであり、確実に希薄化が発生する。そう考えると、結局、負債と自己資本の両方を合わせた資本コスト全体としては資金調達コストは節約になっていない。

では、転換社債を発行する会社にはどのような意図があるのだろうか?通常のケースにおけるオプションの売り手の損益を考えてみればわかりやすい。通常、オプションの売り手が得をするのは、オプションが行使されないまま、権利行使期限が過ぎてしまった場合だ。したがって、発行会社が“結果的に”得するのは、コールオプションが行使されなかった時、すなわち株式への転換が起こらなかった時、ということになる。オプションを売った対価として、低いクーポンレートで社債を発行できた上に、転換権が行使されなかったので自己資本の希薄化も起こらなかいからだ。

このように考えてみると、転換社債を発行する会社というのは、株価が上昇しない方向に賭けていると理解することができる。転換社債を発行するような会社は、会社自身が株価が上昇しないことを予想しているわけだから、少なくとも株式の投資対象としては相応しくない可能性がある。

以上、思いつきで書きましたので、ファイナンスの実務に詳しい方の反論をお待ちしております。
黄金の扉を開ける賢者の海外投資術

橘玲さんの最新作が出たというので早速買って読んでみた。この本のキーメッセージは、金融界に起こった“革命”の結果として、普通の個人投資家でもプロと同等の勝負ができる環境が整っているのだから、そのチャンスをを活かすも殺すもあなた次第ですよ、というあたりだろうか。

普通の個人投資家でもプロと同等の勝負ができる環境とはどういうことかといえば、ハイレバレッジを効かせた取引ができるということだったり、エマージング市場の商品にアクセスできるということだったりする。そして、実はプロであってもそんなにすごいことをしているわけではないし、大きな失敗をすることもあるよ、というあたりだろうか。

ちょっとした手間隙をかけて努力をする人には大きなチャンスだけれども、怠惰で他人任せの人は業者に鴨られていつまでも貧乏人のままだろう、という点も本書から読み取れるメッセージだ。その意味で、橘玲さんのスタンスは結構厳しいと思う。一方で、この人のおかげで、投資のリテラシーを掴むきっかけを得て“自由”への扉を開いた人も多いことだろう。

賢明な投資家になるためには是非読んでおきたい1冊だ。
いつも読んでいる「生命保険 立ち上げ日誌」というブログに「いい」商品とはというエントリがあった。

せっかく新しい会社を作るのだから、「いい保険」を作りたいと思っている。それでは、「いい保険」って、具体的にどういうものをいうのだろう?

なかなか興味深いので、読みながら考えたことを書いてみたい。実は、僕は生保に関しての知識がほとんどないので、本当の勘所というのがよくわからない。けど、パーソナルファイナンスにおいて生命保険は結構重要な存在だろうから、今後も機会があったら考えてみたい。

さて、まずは保険料から考えてみたい。生保の保険料を決める要素は、運用利回り、事業経費率、死亡率の3つである。であるならば、個々の契約者にとって、生保に加入する意味があるのは、次のような要件を満たした時のみだろう。

(生保の運用利回り - 個人の運用利回り)>(経費率 + 死差益率)

契約者からみれば死差益率は限りなくゼロであることが望ましい。生保会社が逃げ道(というと言い方が悪いのであれば、経営の安定のためと言い換えてもよい)として用意しているバッファーだからね。そうして残る要素だけで考えると、生保がプロ運用によりもたらす超過リターンが経費率を上回る時にのみ、加入する意味が出てくることになる。ここで、生保の超過リターンの源泉として、所得控除による節税効果を織り込んでもよい。

そもそも生保加入は本質的には投資商品購入と同じであり、期待リターンがマイナスなら加入する意味がない。巨大な販売組織を抱えた既存生保の場合は、経費率がとても大きいだろうから、生保加入の期待リターンがプラスになるケースは少ないと推測される。そうなると、1人1人の契約者にとっては、期待リターンがマイナスである金融商品(生命保険)を購入する意味って全然ないね、ということになる。

ただし、個々人にとって生保に加入しないことが合理的であったとしても、社会全体では一定の確率で必ず発生する死亡、病気などにおいて、たまたまその確率に該当した個人が十分な貯えを持ち合わせていないケースはあり得る。そいういう確率にたまたま該当してしまった人、あるいはその家族は、大変なことになるだろう。そういったケースを社会全体で救済するというマクロ的な意味では生保の存在意義があるような気がする。

でも、それって政府部門が担う役割、社会保険そのものじゃないかという気もしてくる。生保の本質とは、公的部門が担うべき社会保険の一部を民間部門が担っている、すなわちPFI化したものなのだろうか。ややこしいのは、加入が強制ではないという点で、生保が公的保険と異なっているところだ。いずれにしても、生保の意味というのは、公的社会保険ではカバーできないような事象をによる社会的インパクトを緩和しようというものだと考えられる。

そうすると、信条的な価値判断の世界になってしまうけど、大きな政府と小さな政府どちらが良いかということになるのだろうか?すなわち、大きな政府を志向するのであれば保険料は高いけど保障も手厚い商品設計、小さな政府を志向するのであれば保険料は安いけど保障は限定的な商品設計が望ましいということだろうか?共和党的な思想を持つ人はそもそも生命保険に加入しないか保険料が安くて保障も限定的な商品に加入し、民主党的な思想を持つ人は保険料が高くて保障も手厚い商品に加入すればいいのか。現実の政府が大きいか小さいかというのは、世の中の最大公約数として決まるので必ずしも個人個人の思想にマッチするわけではない。けど、どの保険会社のどの保険商品を買うか、あるいはそもそも買わないか、というのは1人1人が自由に選択できる。その意味で、生命保険は最も民主主義的な社会保険なのだろうか?

なんか書いているうちに、何が言いたいのかよくわからなくなってきた。論点外しているかな。。いずれにしても、日本初のネット生命保険からどいういう商品が登場するのか楽しみに応援したい。
ソニー製品にわくわくしなくなったのはいつからだろう。自分が子供の頃、学生の頃、そして社会人になってからもしばらくは、ソニー製品には夢を感じ、ある種のあこがれの対象だったように記憶している。社会人になり1人暮らしを始めるとき、秋葉原の家電量販店でソニーの平面ブラウン管テレビWEGAが欲しかったのに、予算の都合でaiwa製品を購入した思い出がある。でも、今のソニーからはそういう輝きが霞んでしまっている。ソニーブランドにプレミアムを払う人って今でもいるのだろうか。

このソニーブランドの価値凋落がおこったのは、ほんのこの数年における出来事だ。どの辺がきっかけだったのか、ソニーの10年史を1枚のスライドにまとめながら考えてみた。



ソニーの凋落に関し、いろいろなところで見るのが「出井戦犯説」だ。“文官”である出井さんが技術のソニーをだめにしたのではないかという意見だ。年表を見ていて気づくのは、出井さんの就任直後数年間は、VAIO、PS2、AIBOその他の革新的な製品の上梓、カンパニー制、執行役員制など先進的な制度の導入と、非常に印象のよい会社だったこと。この頃は、出井さん個人に対する世間の評価も高かったように記憶している。ただし、出井政権前期におけるヒット製品の少なくない部分は、大賀さんの時代に仕込まれていたものであることには留意が必要だ。

21世紀に入ったくらいからの出井時代後半において、ソニーから革新的な製品が出てこなくなり、更に、いくつかの主要な分野において他社の後塵を拝したり、存在感を急激に失ったりしている。また、そのころ2000年代前半は業績も横ばい、あるいは下降気味で伸びていない。この業績低迷とヒット商品不在が重なったあたりで、ソニー神話が崩れたのではないか考えられる。それにしてもひどい負けの連続だ。

・PSPがニンテンドーDSに負ける
・PS3がWiiに負ける
・携帯音楽端末でiPodに決定的な後塵を拝す
・薄型テレビでBraviaの投入が、AQUOS,Vieraにかなり遅れる
・パソコン市場においてVAIOの存在感がフェードアウト
・デジカメ市場においてCyber-Shot の存在感がフェードアウト

ソニーブランドの毀損につながった、もうひとつの大きな要因はソニータイマーの存在ではないだろうか。ソニータイマーという概念は、「壊れる時期をコントロールできるほど高い技術力」ではなくて、「1年ちょっとで壊れてしまうほどの低品質」というイメージをもたらしている。ネタに過ぎないソニータイマーという概念が、ここまで一般的なものとして広まったのは、多くのユーザーがソニー製品が絶妙なタイミングで壊れた経験があるからだろう。せっかくブランド代というプレミアムを払ってまで手に入れた製品が、壊れてしまってしかも保証期間が過ぎているので保証してもらえないというショックは少なからずユーザーの記憶に刻み付けられるだろう。僕も個人的に、学生時代に使っていたカセットテープのウォークマンが保証期間を過ぎた1ヶ月後に壊れた経験がある。

ソニーについて最近の明るい話題は、薄型テレビBraviaが急激にシェアを伸ばしたこと、ソニー・エリクソンの携帯が世界中でバカ売れしたこと。音楽機能付携帯は累計145百万台も売ったようだ。2007年末時点でiPhoneの累計出荷台数が4百万台くらいということだから、ソニー・エリクソンの凄さが際立っている。
セブン銀行が上場した。日経には次のように載っていた。

セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン銀行が29日、ジャスダック証券取引所に上場した。ATM事業に特化した独自のビジネスモデルでいち早く高収益体質を築き、新規参入銀行のなかでは突出している。だが、グループ店舗へのATMの設置は昨年までにほぼ完了しており、今後の成長性をどう描くかが問われる。

セブン銀行は銀行を名乗っているがその本質は銀行ではない。日経の記事にもあるとおり、同社のビジネスモデルはATM事業に特化した独特のものだ。有価証券報告書によれば、同社の平成19年3月期の業務収益754億円のうち、ATMの手数料収入が731億円も占めている。資金の貸付による利息収入はゼロだし、資金の運用収益も4億円と僅かしかない。すなわち、同社のビジネスは銀行業務ではなくて、ATM網を基盤としたプラットフォームビジネスなのだ。だれもが気づいているとは思うけど。

まあ、セブン銀行が銀行ではなくてインフラ貸し屋さんとしてのビジネスを確立していることは悪いことではない。経常利益250億円もたたき出すなんて凄いですね、というだけの話だ。ポイントは、ATM網というインフラ貸し屋さんとしてのビジネスの未来の話だ。

日経の記事では、「今後の成長性をどう描くかが問われる」とあるが、本当は成長戦略を描くどころか、どうやって衰退を食い止めるかという話なのではないか。同社のビジネスは、ユーザーが現金を預金口座に預け入れたり、引き出したりするときの接点を提供することによって成り立っている。であるならば、ユーザーが現金を持ち歩かなくなり、預金口座から現金への出し入れをしなくなったらどうなるのだろうか?同社自慢のATM網は無用の長物どころか、赤字を垂れ流すだけの不採算資産の塊になってしまう。

じゃあ、そういうユーザーが現金を持ち歩かなくなる時はやってくるのだろうか?おそらく、電子マネーが今よりももっともっと普及する時がそう遠くない将来にやってくるのではないだろうか。Edy, Suicaなどいろいろと規格があって、どれがデファクトになるのかはわからない。ただ、7&iだってnanacoを普及させようとしているし、電子マネーが進化し、普及していく過程で、銀行口座から現金を出し入れする必要性はどんどん小さくなっていくだろう。クレジットカードを介するのか、スキップしてしまうのかわからないけど、銀行口座から電子マネーへのチャージが自動でできるようになるだろうし、もっと直接的に電子マネーが銀行口座のデビットカード的に機能するようになるかもしれない。

いずれにしても、セブン銀行が今のままATM網を利用したインフラビジネスをやっているのならば、その収益性はここ2~3年くらいがマックスで、あとは落ち込んでいく一方だろう。
日本航空が約1500億円の増資を行うとのこと、日経には次のように載っていた。

日本航空は二十九日、再建のロードマップとなる新中期経営計画(二〇〇八―一〇年度)を発表した。三月中に総額一千五百三十五億円の増資を実施することで取引先などと合意。

新聞などでニュースを見ていると「優先株の発行か。ふーん。」ということで気にもならないのだが、日本航空が発表している第三者割当による株式の発行に関するお知らせを読んでみると、なかなか興味深い。今回の“取得請求権付優先株式”の内容をよくよく見てみると、これってMSCBに似てるなぁという印象だ。

まず、名称こそ優先株ということで株式であるが、中味はとっても社債に似ている。まあ、優先株ってもともと、そういう資本と負債の中間的な性格を持つものなんだけれど。社債に似ているというのは、今回の優先株が次のような特徴があるから。

・議決権がない
・残余財産分配権が普通株より優先する(通常の負債よりは劣後)
・優先配当がTIBOR+3%と実質変動金利

次に、取得請求権なんだけれど、優先株を普通株に転換するに当たって、優先株1株が普通株1株に転換されるわけではない。じゃあ、転換価額がどうやって決まるのかといえば、株価の動向次第というわけだ。しかも、株価が下がったときは、転換価額が下方に修正されるけど、株価が上がっても上方に修正されるわけではない。これって、MSCBそのものじゃないの?

もちろん、往時のMSCBほどひどくはない。内容をマイルドにするためにいろいろと工夫がしてある。
・当初転換価額の決定が3年後なので、今回の経営再建プランで業績が回復し株価が上がれば転換価額も高くなる
・転換価額の見直しは年1回
・転換価額の下限は当初転換価額の50%

それにしても、「転換社債型新株予約権付社債の発行」って言うと印象が悪いけど、「第三者割当による株式の発行」だと、それほど印象が悪くないから不思議だ。
ウェブ時代 5つの定理

梅田さんの新しい本がでたということで早速買って読んでみた。本屋さんで本を手に取ったとき表紙の上の方に小さく書かれた"Make the world a better place"というフレーズを見つけ、Googleの創業者、ラリー・ペイジがForm S-1(株式公開の目論見書)で書いていた文章を思い出した。LETTER FROM THE FOUNDERS  “AN OWNER’S MANUAL” FOR GOOGLE’S SHAREHOLDERSという題だったが、その背景にある思想の壮大さ、純粋さ、そして尊大さにとても心を動かされたことをよく覚えている。あの残春の日から、もう4年近くも経ったのかと思うと時の速さには恐ろしくなる。

We have a strong commitment to our users worldwide, their communities, the web sites in our network, our advertisers, our investors, and of course our employees. Sergey and I, and the team will do our best to make Google a long term success and the world a better place.

先日、山口陽平氏のセミナーでいくつか良い言葉を聞いてきた。その中に次のようなフレーズがあった。

「動機としての社会価値創造」と「強み、使命としてのミッション」とが重なるところにある具体的な目標がビジョンである。個人としてそのビジョンを目指すことを独立、法人として目指すことを事業という。

ラリー・ペイジの文章に心動かされるのは、Googleのビジョンが抱合している壮大なスケールの社会価値創造の目標と、それを可能とするだけの自分達の力への絶対的な自信、そういったものが文章の端々から溢れ出ているからなのだろう。
前回のEコマースはなぜ儲からないかに引き続き、港区赤坂四畳半社長を読んで考えたことを書いてみる。

Eコマースサイトの経営で月に100万円の利益を出すのは並大抵のことではないけれど、モバイル公式サイトなら簡単だからだ。

港区赤坂四畳半社長が述べているように、モバイル公式サイトならば相対的に儲けやすいようだ。これにはいくつか理由があるが、まずひとつはコスト構造の問題だろう。モバイル公式サイトはモノではなくて、コンテンツという無形の情報を売っている。無形の情報を扱っているので、モノを扱う場合に比べれば変動費が圧倒的に低くなる。もちろん、コンテンツの内容によっては版権の利用料という形で、売上原価に相当するコストはかかる。しかし、モノのハンドリングに伴うサプライチェーン系のコストは全くかからないはずだ。宅配便を使って商品を届ける必要はないし、届けるための商品を倉庫内でピッキングしたり梱包したりというダンボール代や人件費もかからない。すなわち、モバイル公式サイトの運営ではEコマースに比べて限界利益率が圧倒的に高いのだ。

加えて、モバイル公式サイトでは固定費も相対的に低くて済む。これは、モノではなく情報を扱っていると言うことと、モバイルサイトのコンテンツがPCサイトのコンテンツよりも“貧弱”なことによる。まず、モノではなく情報を扱っているので、サプライチェーン系のインフラを用意する必要が全くないのだ。Amazonのように巨大な倉庫を建設する必要はないし、サプライチェーン系の基幹システムを用意する必要もない。モバイル公式サイトの運営では、コンテンツ管理系のCMSと顧客・販売管理系のシステムがあれば済む。Eコマースの場合は、この2つの基幹システムに加えてサプライチェーン系の基幹システムを用意して在庫情報をフロント系システムへリアルタイムで連携させ続ける必要が出てくる。Eコマースのためにそれだけのシステムを作って、安定して稼動させ続けるにはお金がかかるけど、モバイル公式サイトではそれがかからない。

モバイルサイトのコンテンツがPCサイトのコンテンツよりも“貧弱”と書いたのは、言葉が適切ではないだけれど、PCサイトの“リッチ”なコンテンツの反意語という意味で言葉を選んでみた。どちらが、エライとか優れているとか、価値判断をしているわけではないので誤解のなきよう。“リッチ”なコンテンツというのは見た目はカッコイイし、ユーザーにとって利便性が高い時もあるのだけれど、“重い”という弱点がある。ADSL回線や光回線の普及でユーザー側にとっては、コンテンツが“重い”か“軽い”かというのはそれほど問題ではなくなっている。しかし、コンテンツを配信する側にとっては、未だに“重い”ものを提供するのは簡単なことではない。サーバーや回線に多額の投資をして強固なインフラを備えていなければ、“リッチ”なコンテンツを提供することはできない。モバイルサイトの世界では、今のところ、端末機器の性能及び回線速度がボトルネックとなっているために、PCサイトに比べれば“貧弱”なコンテンツを準備すればよく、その配信のためのインフラも相対的に堅牢さが低くて済むし、お金もかからない。

モバイル公式サイトが儲かる理由として、コスト構造の他に挙げられるのが、細かなコンテンツ単位でのユーザー課金が可能という点だ。課金単位は、月次だったり、ダウンロードごとだったり、1話ごとだったりと、コンテンツ内容によって異なるのだろうが、結構細かな単位でチャリンチャリンと小額課金することができるというのが大きい。PCサイトの世界が基本的に何でも無料がデフォルトになっているのとは逆で、モバイルサイトの世界は小額課金がデフォルトだ。ユーザーに課金できるというのは収益の安定化のためにはとても大きく寄与する。

PCサイトの世界では非常に難しいユーザー課金が、モバイルサイトの世界で可能なのはどうしてなのだろうか?僕は、これに対する回答のファクトを持っていない。2つ仮説があるのだが、ひとつは両者のユーザー層が全く異なっているのではないかということ、もうひとつは、モバイルの端末機器の性能限界によるものではないかということだ。

PCサイトのユーザーのコアな層というのは、2ちゃんねらー、はてなー、ニコ厨なんかが典型的ではないかと推測するのだが、こういった層はある意味では“リテラシーが高い”し“スキルも高度”である。欲しい情報をネット上で探し出したり、それをタダで手に入れようとしたりするだけの能力というか、メンタリティというか、せこさを持っている。団塊ジュニアくらいがこういった層の中心なのかなと推測される。それに対してモバイルサイトのユーザーは、もっとお手軽にネットを利用している層であり、ネットへの接続手段としてPCすら持っていないという人も多いのではないか。携帯小説を読んでいたりするような層が典型的だと思うが、若年層が中心と推測される。こういった層は、情報検索能力が相対的に低いのではないか、そしてPCサイトユーザーのようなせこさとか執念深さが低いのではないだろうか、だから「これくらいならいいか」ということで小額課金に応じてしまうのではないだろうか。誤解しないでいただきたいが、どちらが優れているとかそういう価値判断の話をしているのではない。PCユーザーのように延々と時間を使って何かを探し出すよりも、モバイルユーザーのように小額払ってしまったほうが、時間をコストととらえれば、コスト効率が高いことだってあるだろう。

それにしても、PCサイトユーザーとモバイルサイトユーザーの断絶というのは大きいのではないかという気がする。携帯小説の恋空を馬鹿にしているニコ厨が「CLANNADは人生 」なんて言っていたりするのだから、50歩100歩ではないかという気もするが、両者の価値観の違いというのは大きい。

携帯端末の性能限界については、入力デバイスのユーザビリティの問題とディスプレイの大きさの問題があると思う。梅田さんではないが、Googleの登場というのは革命的であり、インターネット世界の発展に大きな変革点をもたらしたと思うのだが、PCサイトの世界では検索によっていろいろなものを探し出すのがとても容易である。検索にあたってのキーワード入力がQWERTYキーボードと両手10本の指でならば簡単に行えるというのは、検索の利便性、手軽さをもたらしている。それに対して、携帯端末の場合は10キーと親指1本での入力である、入力の利便性も手軽さも速さもまるで話にならない。そうであるならば、キャリアの公式メニューから辿っていったりだとか、お気に入りに登録しているサイトだとか、そういった限られたサイトばかりをみるのがモバイルユーザーということになるだろう。わざわざ検索のために入力をして、欲しい情報を探すためにかかる労力だとか時間、コストはとても大きい。また、モバイルの世界では、ディスプレイの大きさの問題から画面の中に一度に表示できる情報の量が限られている。そういう世界ではやはり、情報を探して回るという作業の労力、コストはとても大きいと言える。そういう環境下ではユーザーは小額課金を受け入れてコンテンツをサクッと手に入れるほうが合理的なのかもしれないし、そういう行動を続けているとコンテンツに対してお金を払うことが当たり前になるのかもしれない。

僕が勝手に考えているように、モバイルサイトの高収益性を支えているものが、PCサイトユーザーから断絶されたユーザー層の存在であり、また、携帯端末の性能限界に起因するのだとしたら、モバイルサイトの高収益性は将来もある程度長い期間に亘って維持されるのではないだろうか。モバイルサイトユーザー層のプロファイルが急激に変っていくことはないだろうし、携帯端末の入力にかんするユーザビリティが劇的に向上することもないだろう。

と、まあ、モバイルサイトなんか全く使ったことがない僕が書いたので間違っている部分や、誤解している部分も多分にあると思う。突っ込みや間違いの指摘など、ご意見をいただけると幸いです。

最近のコメント

  • ・戦略とはポジショニングである
    あかつき
  • ・戦略とはポジショニングである
    silencejoker
  • ・ヤクザマネー
    あかつき
  • ・ヤクザマネー
    toshi
  • ・まともな基幹系システムを作るSEには会計のセンスが必須
    あかつき
  • ・まともな基幹系システムを作るSEには会計のセンスが必須
    N4
  • ・人を育てることと、事業を育てること
    あかつき
  • ・人を育てることと、事業を育てること
    cpainvestor
  • ・戦略とはポジショニングである
    acatsuki
  • ・戦略とはポジショニングである
    cpainvestor

(RSS1.0/RSS2.0/Atom)

この日記のはてなブックマーク数