前回の
Eコマースはなぜ儲からないかに引き続き、
港区赤坂四畳半社長を読んで考えたことを書いてみる。
Eコマースサイトの経営で月に100万円の利益を出すのは並大抵のことではないけれど、モバイル公式サイトなら簡単だからだ。
港区赤坂四畳半社長が述べているように、モバイル公式サイトならば相対的に儲けやすいようだ。これにはいくつか理由があるが、まずひとつはコスト構造の問題だろう。モバイル公式サイトはモノではなくて、コンテンツという無形の情報を売っている。無形の情報を扱っているので、モノを扱う場合に比べれば変動費が圧倒的に低くなる。もちろん、コンテンツの内容によっては版権の利用料という形で、売上原価に相当するコストはかかる。しかし、モノのハンドリングに伴うサプライチェーン系のコストは全くかからないはずだ。宅配便を使って商品を届ける必要はないし、届けるための商品を倉庫内でピッキングしたり梱包したりというダンボール代や人件費もかからない。すなわち、モバイル公式サイトの運営ではEコマースに比べて限界利益率が圧倒的に高いのだ。
加えて、モバイル公式サイトでは固定費も相対的に低くて済む。これは、モノではなく情報を扱っていると言うことと、モバイルサイトのコンテンツがPCサイトのコンテンツよりも“貧弱”なことによる。まず、モノではなく情報を扱っているので、サプライチェーン系のインフラを用意する必要が全くないのだ。Amazonのように巨大な倉庫を建設する必要はないし、サプライチェーン系の基幹システムを用意する必要もない。モバイル公式サイトの運営では、コンテンツ管理系のCMSと顧客・販売管理系のシステムがあれば済む。Eコマースの場合は、この2つの基幹システムに加えてサプライチェーン系の基幹システムを用意して在庫情報をフロント系システムへリアルタイムで連携させ続ける必要が出てくる。Eコマースのためにそれだけのシステムを作って、安定して稼動させ続けるにはお金がかかるけど、モバイル公式サイトではそれがかからない。
モバイルサイトのコンテンツがPCサイトのコンテンツよりも“貧弱”と書いたのは、言葉が適切ではないだけれど、PCサイトの“リッチ”なコンテンツの反意語という意味で言葉を選んでみた。どちらが、エライとか優れているとか、価値判断をしているわけではないので誤解のなきよう。“リッチ”なコンテンツというのは見た目はカッコイイし、ユーザーにとって利便性が高い時もあるのだけれど、“重い”という弱点がある。ADSL回線や光回線の普及でユーザー側にとっては、コンテンツが“重い”か“軽い”かというのはそれほど問題ではなくなっている。しかし、コンテンツを配信する側にとっては、未だに“重い”ものを提供するのは簡単なことではない。サーバーや回線に多額の投資をして強固なインフラを備えていなければ、“リッチ”なコンテンツを提供することはできない。モバイルサイトの世界では、今のところ、端末機器の性能及び回線速度がボトルネックとなっているために、PCサイトに比べれば“貧弱”なコンテンツを準備すればよく、その配信のためのインフラも相対的に堅牢さが低くて済むし、お金もかからない。
モバイル公式サイトが儲かる理由として、コスト構造の他に挙げられるのが、細かなコンテンツ単位でのユーザー課金が可能という点だ。課金単位は、月次だったり、ダウンロードごとだったり、1話ごとだったりと、コンテンツ内容によって異なるのだろうが、結構細かな単位でチャリンチャリンと小額課金することができるというのが大きい。PCサイトの世界が基本的に何でも無料がデフォルトになっているのとは逆で、モバイルサイトの世界は小額課金がデフォルトだ。ユーザーに課金できるというのは収益の安定化のためにはとても大きく寄与する。
PCサイトの世界では非常に難しいユーザー課金が、モバイルサイトの世界で可能なのはどうしてなのだろうか?僕は、これに対する回答のファクトを持っていない。2つ仮説があるのだが、ひとつは両者のユーザー層が全く異なっているのではないかということ、もうひとつは、モバイルの端末機器の性能限界によるものではないかということだ。
PCサイトのユーザーのコアな層というのは、2ちゃんねらー、はてなー、ニコ厨なんかが典型的ではないかと推測するのだが、こういった層はある意味では“リテラシーが高い”し“スキルも高度”である。欲しい情報をネット上で探し出したり、それをタダで手に入れようとしたりするだけの能力というか、メンタリティというか、せこさを持っている。団塊ジュニアくらいがこういった層の中心なのかなと推測される。それに対してモバイルサイトのユーザーは、もっとお手軽にネットを利用している層であり、ネットへの接続手段としてPCすら持っていないという人も多いのではないか。携帯小説を読んでいたりするような層が典型的だと思うが、若年層が中心と推測される。こういった層は、情報検索能力が相対的に低いのではないか、そしてPCサイトユーザーのようなせこさとか執念深さが低いのではないだろうか、だから「これくらいならいいか」ということで小額課金に応じてしまうのではないだろうか。誤解しないでいただきたいが、どちらが優れているとかそういう価値判断の話をしているのではない。PCユーザーのように延々と時間を使って何かを探し出すよりも、モバイルユーザーのように小額払ってしまったほうが、時間をコストととらえれば、コスト効率が高いことだってあるだろう。
それにしても、PCサイトユーザーとモバイルサイトユーザーの断絶というのは大きいのではないかという気がする。携帯小説の恋空を馬鹿にしているニコ厨が「CLANNADは人生 」なんて言っていたりするのだから、50歩100歩ではないかという気もするが、両者の価値観の違いというのは大きい。
携帯端末の性能限界については、入力デバイスのユーザビリティの問題とディスプレイの大きさの問題があると思う。梅田さんではないが、Googleの登場というのは革命的であり、インターネット世界の発展に大きな変革点をもたらしたと思うのだが、PCサイトの世界では検索によっていろいろなものを探し出すのがとても容易である。検索にあたってのキーワード入力がQWERTYキーボードと両手10本の指でならば簡単に行えるというのは、検索の利便性、手軽さをもたらしている。それに対して、携帯端末の場合は10キーと親指1本での入力である、入力の利便性も手軽さも速さもまるで話にならない。そうであるならば、キャリアの公式メニューから辿っていったりだとか、お気に入りに登録しているサイトだとか、そういった限られたサイトばかりをみるのがモバイルユーザーということになるだろう。わざわざ検索のために入力をして、欲しい情報を探すためにかかる労力だとか時間、コストはとても大きい。また、モバイルの世界では、ディスプレイの大きさの問題から画面の中に一度に表示できる情報の量が限られている。そういう世界ではやはり、情報を探して回るという作業の労力、コストはとても大きいと言える。そういう環境下ではユーザーは小額課金を受け入れてコンテンツをサクッと手に入れるほうが合理的なのかもしれないし、そういう行動を続けているとコンテンツに対してお金を払うことが当たり前になるのかもしれない。
僕が勝手に考えているように、モバイルサイトの高収益性を支えているものが、PCサイトユーザーから断絶されたユーザー層の存在であり、また、携帯端末の性能限界に起因するのだとしたら、モバイルサイトの高収益性は将来もある程度長い期間に亘って維持されるのではないだろうか。モバイルサイトユーザー層のプロファイルが急激に変っていくことはないだろうし、携帯端末の入力にかんするユーザビリティが劇的に向上することもないだろう。
と、まあ、モバイルサイトなんか全く使ったことがない僕が書いたので間違っている部分や、誤解している部分も多分にあると思う。突っ込みや間違いの指摘など、ご意見をいただけると幸いです。
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