スタートトゥデイが上場

12月11日にスタートトゥデイという会社が東証マザーズに上場するようだ。この会社は、アパレルのEコマース等を手がけている。有価証券届出書等の公開されている情報を読みながら気づいたポイントなどについて書いてみたい。同社の事業内容は、有価証券届出書から拝借してきた事業系統図によると下図のとおり。


同社の平成19年3月期の売上高は約60億円であるが、そのうち自社販売(ストア企画開発事業)が約45億円、受託販売の手数料売上(ストア運営管理事業)が約15億円となっている。カード事業、広告事業等のその他の事業の売上はまだ微々たるものだ。ということは、同社の事業は今のところ、自社で在庫リスクを負って商品を販売する小売業事業とネット上のモールを運営事業の2つがメインのようだ。乱暴な言い方をすれば、アマゾンと楽天を足して2で割って規模を小さくして、取扱商品をアパレルに特化したような会社と言えるだろう。

業績の推移をチェックしてみると下図のようになっている。売上の成長率と利益率の高さは特筆すべきものがある。特に直近年度の経常利益が8億円も出ているというのがすごい。1点注意すべきなのは、小売業(Eコマース)の会社として利益率を見てはいけないということだろう。受託販売の売上高は商品代金を含んでおらず手数料部分のみが計上されているはずだから、受託販売事業の数値が見た目の利益率を押し上げている。いずれにしてもこの規模の会社で経常利益8億円というのはすごい。ちなみに、受託販売の手数料が15億円ということは、同社のECサイトにおける流通総額はもっともっと大きいということであり、受託事業の商品取扱高は約66億円、自社販売約45億円となっている。合わせた流通総額は約112億円あるということらしい。


この凄まじい成長力と利益率の源泉はどこからくるのだろうか、同社は有価証券届出書において次のように説明している。
その後、平成12年10月にファッションに対して強い関心を持つ顧客層を主要ターゲットとしたアパレル商材の取扱を開始いたしました。現在、インターネット上のショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営しており、(株)ユナイテッドアローズ、(株)ビームス、ディーゼルジャパン(株)をはじめとする主要アパレルブランドからの商品供給体制を確立してまいりました。平成19年9月末現在、92ショップを運営しており、取扱ブランド数は680となっております。常時20,000以上のアイテムを掲載するとともに、日々数百アイテムを新着商品として登録しており、常に最新の商品情報を店頭とほぼ同じ時期に入手する事が可能です。

 サイト上の各ショップはコンピューター・グラフィックス(CG)を駆使し、ブランド各社の実在する店舗を再現したり、建築家の設計に基づいて制作を行うなど、臨場感あふれるものになっております。商品情報に関しては、当社にて商品撮影・採寸を行って情報をデータベース化しておりますが、商品画像の掲載にあたっては、商品イメージがより伝わりやすいよう1アイテム当たりの写真カット数を多くすると共に、モデルが実際に着用して撮影する着せ撮りを活用しております。

2万アイテムにも達する品揃えはネットならではの特性を活かしたロングテール型のビジネスといえるだろう、そしてそのロングテールを構成するのが単なるニッチ商材ではなくてユナイテッドアローズやビームス、吉田カバンといった有名ブランドであるというのが特徴だ。通常、強いブランド、こだわりのブランドを持っているメーカーというのは、ネット販売を他人に任せるのに非常に消極的だ。世界中どこからでも、誰でも、いつでも見ることができるネット上で、変な販売の仕方をされてしまっては、せっかく築き上げてきたブランドに傷がついてしまうリスクがある。だから、ネットショップを開いたからといって誰でもが人気ブランドの商品を扱えるわけではない。

そんななか同社は、ECサイトを丁寧にカッコよくセンスよく作り上げることでブランドの信頼を得ているのだろう。僕のように30過ぎのネットユーザーから見れば、写真やFlashを多用している同社のサイトは、サイトのレスポンスの早さや使いやすさといったユーザビリティの面から疑問を持ってしまうが、同社がターゲットにしている顧客層は僕のような人間ではなくてもっと若くてセンスと感度がよい層なのだろう。そして、そういう層の消費者やそこをターゲットとしているアパレルブランドにとって、あのようなサイトの造りが好まれるのだろうと推測される。

さらには、同社の商品に対する真摯で熱い思いが各ブランドに伝わった結果なのだろう。前澤社長のインタビュー記事に次のようなくだりがある。こういう純粋な想いが人を動かすのだろう。

「あなたのところの商品が好きで、何としても僕のこの思いをお客さんにも届けたい」という感じの営業をしてきたんです。そこにはうそもないし、格好付けることもありません。「そういう心が届いた結果が今なのかな」という気がしてます。

同社のサイトをみていると、何となく一休に似ているなと感じる。宿泊予約サイトの一休は、高級ホテル、旅館に特化することにより他者との差別化に成功し、伸びた。一休の強さは、取り扱っている各高級ホテル等のブランド郡が一休というブランド自体の価値を押し上げている点にある。スタートトゥデイもそこに集まっている有力ブランド郡の力でZOZO townというサイト自体のブランド価値が押し上げられているのだろう。

じゃあ、同社が一休のように中味があまりない会社なのかというとそんなことはない。同社はEコマースを行う上で必要なことに地道に取り組んでいる。再び前澤社長のインタビューからの引用だが、次のようなくだりがある。

今でもそうですけどね。たとえば、デザインやシステムや物流、カスタマーセンターなんかを自社で全部やっているのは、その時の名残です。「なるべく自分たちでやろうよ」って。パンクを聴いている人たちはよく知っているんですけど、「DIY(Do It Yourself)」って言葉があります。僕らのフィロソフィーはまさに「DIY」です。

デザインやシステムや物流、カスタマーセンターなんかを自社で全部やっているというのは真面目だと思う。特に物流やカスタマーセンターなんて労働集約的だし、手間ばっかりかかるから、こういうところをやりたがらないIT企業というのは多いだろう。そんな中、同社はそういっためんどくさい部分にも真正面から取り組んでいる。有価証券届出書によれば、同社の物流倉庫は3,317.16平方メートル(約1,000坪)もの広さがあり、さらに今回のIPOで手にする資金を使って移転拡張する計画らしい。その移転が完了すれば、本社オフィスと物流倉庫が一体となった拠点ができるようだ。Eコマースを営む企業にとって本社オフィスと物流拠点が同じ場所にあるというのは、ある意味で理想の姿だろう。無理して東京に出てきたりせず、千葉の幕張に引っ込んだままそういうことを実現しようとする姿勢は素晴らしいと思う。

同社は、若干32歳の茶髪の社長に率いられた平均年齢24.8歳の若者達の会社だ。今後、同社がIPOを果たし、成長していく過程で否定的な見方をされることもあるかもしれない。それでも、商品に対する純粋な想いとEコマースへの地道な取り組みは本物だろう。本物である同社が、IPO後にどのような成長の軌跡をたどるのか注目したい。

ちょっと褒めすぎの感があるが、もちろん同社にも色々とリスクはあると思う。それについては、各自、有価証券届出書を分析したりして考えていただきたい。
           

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コメント(2)

初歩的な質問ですが、参考のためお聞きします。 受託販売の手数料が15億円ということは、同社のECサイトにおける流通総額はもっともっと大きいということであり、受託事業の商品取扱高は約66億円、 ---> 受託事業の商品取扱高は約66億円 というのは、どこかにデータが掲載されているのですか?それとも掲載データから算出したのですか?数字の根拠を教えていただけないでしょうか。
>たろうさん 目論見書の、2 【生産、受注及び販売の状況】の、(2) 販売実績の表中に「商品取扱高」として載っています。

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