2007年12月アーカイブ

株式会社の設立方法についての備忘録。

商号を決め会社の印鑑を作成したら、次のステップは定款の作成だ。定款の作成にあたって、気をつけなければならないポイントのひとつは事業の目的の記載。ここが不適切だと登記を受け付けてくれない可能性がある。じゃあ、事業の目的の表現が適切かどうかどうやって判断するのかと言えば、法務局に行って相談してみればいい。法務局に行ってみると相談コーナーというのが設置されている。銀行のように番号票をとって順番待ちする。僕の場合、定款の下書きをプリントして持って行ったら、わりとあっさりとOKがでたのだが、担当職員の人がサインをしてくれた。まあ、どの職員の人もサインをしてくれるのかどうかはわからないし、そのサインの効力のほどは不明だけど。

ところで、定款を作成するのには結構お金がかかる。まず公証人に公証してもらわなければならないのだが、これが一律5万円。どこの公証人役場に行っても同じ額だ。それから、株式会社の定款には印紙を貼らなければならないのだが、これが4万円。合わせて9万円はかかる。

ここで、この定款作成費用を節約する方法が存在する。定款を電磁的な方法により作成するのだ。そうすると印紙代4万円が不要になる。このとっても素晴らしい電磁的方法で作成する定款だけれど、ちょっとだけハードルが存在する。ただし、そのハードルはそんなに高くない。素人でも割りとあっさりクリアできる。会社設立の代行をしている行政書士のHPには「高価な専用ソフトが必要」等の記載がある場合があるが、これは大嘘なので騙されてはいけない。では、具体的な手順はどうなっているのか?法務省日本公証人連合会のHPにとっても丁寧な解説が載っている。細かい手順はそちらを見ていただくとして、電子公証に必要な“専用ソフト等"の具体的内容は次の通り。

○PDF作成ソフト。これは単にPDFを作るだけではなくて法務省指定の方式で電子署名を行う必要があり、その方式が対応しているのはAdobe Acrobatのみ。したがって、無料のPDF作成ソフトや安価なソフトを使って済ませるわけにはいかない。Adobe Acrobatは、実売価格3万円超なので結構高い。4万円の印紙代を節約しても、ここでかなり節約分を使ってしまう。

○電子認証ファイル。これは、上記のPDFファイルへの電子署名の時と法務省のオンライン申請システムでのデータ送信時の電子署名の時とで2回必要になる。この電子認証ファイルを民間企業に発行してもらうと結構お金がかかるのだが、全国の自治体が行っている公的個人認証サービスというのを利用すると安く入手することが出来る。

公的個人認証ファイルの入手にはまず住民基本台帳カードを作る必要がある。これに500円かかる。そして市役所の窓口で住基カードの発行申請をしても即日交付はしてくれない。1週間弱で自宅に引き換え用紙が送られてくるのでそれを持って受け取りに行く。で、その受け取りの際に公的個人認証ファイルの発行申請をすると、また500円かかるけど今度は即日で住基カードに電子認証ファイルを格納してくれる。その際、住基カード自体のパスワードとして数字4桁のもの、電子認証ファイルのパスワードとして英数字4文字以上16字以下のものを設定しなければならない。僕はちょっと焦ってしまったので、予めパスワードを考えておくのがよいかもしれない。

で、その住基カードを自分のパソコンで読み取るためにはカードリーダが必要だ。自治体によって住基カードが接触型の場合と非接触型の場合があるので買う際には注意すること。僕が購入したのはこれ。定価で3千円弱。家電量販店で買うともう少しだけ安かった。これで必要なものは全部揃った。本当かどうかはわからないが、公的個人認証が利用できる行政手続は今後増えていくらしいので、住基カードとICカードリーダを持っていると他の用途にも使えるときが来るかもしれない。国税申告のeTAXには使えるらしいので、今度の納税申告はオンラインでやってみようと思う。さて、本題に戻ると、あとは法務省のHPに載っている手順のとおり進めていくだけだ。

電子公証はオンラインでの申請だが、公証人役場には、予め足を運んで相談しておくとよいと思う。定款のドラフトを持って行くと結構丁寧にチェック、助言してくれる。僕が利用した公証人役場では、電子公証はまだ数例しか取り扱ったことがないとのことだった。また、その数例のケースはいずれも行政書士の人が代理でやっていたらしく、本人が電子公証を利用するのは初めてだと言われた。

定款の公証が終わったら、資本金の振込と法務局での登記申請だ。資本金の振込は、発起人、ようするに自分の名義の銀行口座に、自分の名義で振り込めば終わり。で、通帳の該当の振込が載っているページと口座の名義人がわかるページの2箇所をコピーすればいい。保管証明書が必要なくなったというのは、かなり便利だ。

今度は、登記申請だけど、設立登記に必要な書類の雛形は全て法務局のHPに掲載されている。定款の雛形もここで手に入る。わざわざ本とかを買う必要もないだろう。雛形に記載されている通りに申請書類のドラフトを作成したら、法務局に相談に行くといい。この相談に行く際には定款の記載の事業の目的の表現の相談も兼ねると効率的だ。定款以外の相談ポイントとしては、必要な書類が漏れなく揃っているかとか、各書類に記載する日付とか、どの書類にどの印鑑(発起人としての個人印と設立する会社の取締役としての実印)を押すかとか、そんなあたりだろうか。

設立申請までの手順を整理すると次のようになる。

○電子認証に必要なAcrobatや住基カード、ICカードリーダを揃える。
○定款や申請書類のドラフトを作成する。
この2つの手続きは並行で進めたい。次の2つはどちらが先でもよい。

○法務局での申請書類ドラフトについての相談。
○公証人役場での定款ドラフトについての相談。

○オンラインで定款の公証を申請。

○公証が終わってファイル等を受け取ったら、資本金の振込。

○設立登記申請書類の作成。

○法務局へ申請書類一式を提出。この登記申請日が会社設立の日となる。

以上、若干めどくさい手続きではあるが、1つ1つ自分でやってみるとパズルを解いていくような楽しさがある。費用面に関して言えば、Acrobat購入費を考えると、定款の電子認証を行政書士等に頼んだほうが安く済むケースも多いかもしれない。僕の場合はもともと仕事用にAcrobatを買おうと思っていたので、ここに関しては埋没原価と理解することにした。強がりかもしれないけど。

 また、本来、起業をしようとする者であれば、そんな間接手続きに時間やエネルギーを費やすのではなく、本業の方にエネルギーと時間を費やしたほうが効率的である、という考え方もあるかもしれない。そしてそれはかなり正しいと思う。全くその通りだ。自分が比較優位を持たない分野については他人に任せてしまうのが最も効率がいい。

 それでも、DIYの精神で、何でも1度は自分でやってみるのは楽しいと思う。定款の電子認証の手続きも会社設立の手続きもそんなに難しくない。他人にわざわざお金を払わなければできないほど高度で専門的な作業ではない。このような作業を何回もやるのであればアウトソースした方がいいのだろうが、1回だけであれば自分でやってみるのもいいと思う。
亜玖夢博士の経済入門

橘玲の久々の新作である。内容は、5本の短編物語の中で経済理論をあてはめようというもの。この作品の主人公は、亜玖夢三太郎という怪しげな博士で、この博士の元に訪れる、多重債務、いじめなどの悩みを抱えた相談者たちを中心にストーリーが展開される。5本の短編のテーマは次の通り。

多重債務 カーネマンの行動経済学
利権争い ノイマンのゲーム理論
いじめ ワッツとストロガッツのネットワーク理論
マルチ商法 チャルディーニの社会心理学
自分探し ゲーデルの不完全性定理

コテコテでベタベタにわざとらしい設定の中で面白可笑しく展開していくストーリーと、その中にちりばめられた経済理論のわかりやすさは、さすがだ。そして、登場人物は救いようもなくダメな人達ばかりで、各短編のオチもダメな人たちに相応のものなのだけれど、最後まで読み終えたときには不思議と読後感の悪さがない。こういう全体感の仕上げ方も、さすがベストセラー作家だ。

そして、ちょっぴり役立つ知恵を得られるのも橘玲の本の特徴だ。今回も期待通りだ。紹介されている経済理論はそんなに目新しいものではないのだけれど、物語というコンテクストの中で紹介されることで、理解しやすく記憶に残りやすくなっている。
今回は10月19日に大証ヘラクレスに上場したナチュラムについて、有価証券届出書等の公開されている情報を読みながら気づいたポイントなどについて書いてみたい。この会社は釣具やアウトドア製品のEコマースを手がけている。この会社は、Eコマース事業とECソリューション事業の2つの事業を行っているようだ。そしてEコマース事業の事業系統図は次のとおりである。



同社の売上高約35億円のうち約33億円がEC事業によるものであり残りの約2億円がECソリューション事業によるものである。売上高の規模で見ればEC事業が圧倒的なメインであり、ECソリューション事業はオマケのようなものに見える。が、このECソリューション事業を見過ごしてはいけない。事業の中味は、ECシステムの販売(ASP提供)とECシステム構築、ECサイト運営、EC決済・物流等のアウトソーシングのようだ。要するに、自社のメインのビジネスを回すために開発したインフラを他社にも提供して、固定費の回収を早めようという試みだ。こういうのがうまく回っていると利益を確保しやすくなる。普通なら、変動費ゼロ、固定費も既に本業の方で支出済みだからね、こういう事業の売上はほぼ100%近くが利益になる。しかし、同社の場合、なんか様子が違う売上177百万円に対して仕入119百万円が発生している。同事業の売上の過半は仕入が発生するような内容のビジネスであって、システムのASP提供の売上実績はかなり小さそうだ。ソリューション事業で何で仕入が発生しているの?という疑問については後で触れたい。

業績の推移をチェックしてみると下図のようになっている。売上高の成長率はそれなりに素晴らしいものがある。が、前回分析したスタートトゥデイに比べると成長率の勢いが物足りない。利益についてはもっと物足りない感じだ。まあ、小売業の会社で34億の売上で1億の利益が出ていれば、そんなに悪い数字ではないだろう。スタートトゥデイの数字が良すぎるとも言える。同じような時期に上場となり、同じような事業をやっている2社だけど、この辺の成長性とか収益性の違いが、東証マザーズに上場できるか大証ヘラクレスとなるのかという差なのかなと思ったりする。あるいは、主幹事を野村證券にしても審査部審査に耐えられるのか、審査体制が相対的に弱そうなネット証券を主幹事とする違いなのだろうと思う。偏見かもしれないけど。



さて、同社の強みはどこにあるのだろうか?有価証券届出書の事業の概要を読んでいると、システムに相当の自信を持っているらしいことがわかる。下記のような文に続き、システムの説明に延々とかなりのスペースを割いている。まあ、外販するくらいだしね。良いシステムなんでしょう。きっと。

当社のEコマース(インターネット通信販売)事業は、当社が自社で開発したEコマース向けのERP(統合基幹業務システム)である「NEXAS」によりフロントヤード(Webシステム、オンラインモール連携など)、バックヤード(受注管理システム、商品管理システム、物流管理システムなど)及び販売管理システムがすべてリアルタイムに連携し、効率的な事業運営を可能としております。

システムの構成として、フロントがあってその裏側に基幹系があるというのはECのシステムとしては普通だろう。着目したいのは、同社がB to Bシステムとよんでいるものの一部だ。次のような説明が書かれている。

受注した商品につき自社に在庫がなかった場合、リアルタイムに該当商品の仕入先用納期回答画面に受注商品情報が表示されます。在庫のある仕入先では画面よりチェックし、日付(納品予定日)を入力することで、システムより自動的に顧客に対して出荷予定日が連絡され、受注処理が行われ、物流センターへ入出荷指示が出されます。

約20万アイテム(商品)情報を効率的にメンテナンスするため、仕入先は自社の商品情報の変更や新規商品情報の登録が可能であります。この機能の提供により最新の商品情報の維持が可能となっております。

これって、どういうことかといえば、商品仕入に係わるオペレーションの一部を仕入先の会社に肩代わりさせているということだ。さらには、商品のカタログ情報データベースの入力からメンテナンスまでも仕入先の会社に肩代わりさせているということだ。20万アイテムにも達する商品について、カタログ情報データベースをメンテナンスしたり、それらを扱う無数の仕入先とのやりとりを全部自社内のリソースで賄っていたら人件費がとんでもないことになってしまう。取引先のリソースを巧みに利用しつつ、20万という圧倒的な品揃えを実現しているのは賢いやり方だと思う。

システムに相当の強みを持っているらしいが、それ以外のところはどうなんだろうか。有価証券届出書を見ていて、一見してわかるのが、物流業務のアウトソースだ。物流倉庫業務を通販会社のムトウに委託しているらしい。これについての判断は難しいと思う。労働集約的で手間も倉庫の建物とかインフラ周りのお金もかかる物流業務を外部に委託すると言うのはひとつの経営判断だと思う。自分が苦手なことは、それを得意としている会社に任せてしまったほうが良い場合は多い。だけど、アマゾン(日通と提携しているけどね)やスタートトゥデイが自社で巨大な倉庫を持っているのは、それがEC事業の競争力を決める重要な一要素だからではないだろうか?ECの物流が通常のカタログ通販の物流と違うのは、ロングテールの品揃えからくる超多品種小ロットの物流をこなさなくてはならない点だ。この厄介な超多品種小ロットの商品について、物流オペレーションのスムーズさ、速さ、コスト効率といったあたりが、競争力を左右する重要な一因になるのではないだろうか。

話は変わるが、有価証券届出書の「経営上の重要な契約」をながめていると意外な名前が1社載っている。ナチュラムは、アマゾン・ドット・コム インターナショナル セールス インクと商品供給契約を結んでいるらしい。この会社は日本のアマゾンを運営している会社だ。アマゾンのサイト上に次のような説明がある。あるいは、アマゾンで本とかを買うと同梱されてくる納品書兼領収書もこの会社の名前で発行されていることからも、この会社が日本のアマゾンの運営会社だということがわかる。

Amazon.co.jp とは 米国法人Amazon.com, Inc.の商標であり、Amazon.com, Inc.の許可のもとに、Amazon.com, Inc.の子会社のAmazon.com Int'l Sales, Inc.が使用しています。

小売業をビジネスとしているナチュラムが、同じく小売業のアマゾンに商品を供給、即ち卸売をしているというのはどういうことなのか?推測だが、おそらくナチュラムはドロップシッピングをやっているのだろう。アマゾンのサイト上で売られている釣具やアウトドア商品の一部はナチュラムが供給しており、それらに一般消費者からの注文が入るとアマゾンからナチュラムの倉庫に出荷指示が来て、そこから消費者に向けて直接出荷される仕組みになっているのではないだろうか。上の方で触れた、ECソリューション事業なのに何で仕入が計上されているのかという答えはここにある。おそらく、ナチュラムはドロップシッピングの売上をECソリューション事業に区分しているのだろう。
12月11日にスタートトゥデイという会社が東証マザーズに上場するようだ。この会社は、アパレルのEコマース等を手がけている。有価証券届出書等の公開されている情報を読みながら気づいたポイントなどについて書いてみたい。同社の事業内容は、有価証券届出書から拝借してきた事業系統図によると下図のとおり。


同社の平成19年3月期の売上高は約60億円であるが、そのうち自社販売(ストア企画開発事業)が約45億円、受託販売の手数料売上(ストア運営管理事業)が約15億円となっている。カード事業、広告事業等のその他の事業の売上はまだ微々たるものだ。ということは、同社の事業は今のところ、自社で在庫リスクを負って商品を販売する小売業事業とネット上のモールを運営事業の2つがメインのようだ。乱暴な言い方をすれば、アマゾンと楽天を足して2で割って規模を小さくして、取扱商品をアパレルに特化したような会社と言えるだろう。

業績の推移をチェックしてみると下図のようになっている。売上の成長率と利益率の高さは特筆すべきものがある。特に直近年度の経常利益が8億円も出ているというのがすごい。1点注意すべきなのは、小売業(Eコマース)の会社として利益率を見てはいけないということだろう。受託販売の売上高は商品代金を含んでおらず手数料部分のみが計上されているはずだから、受託販売事業の数値が見た目の利益率を押し上げている。いずれにしてもこの規模の会社で経常利益8億円というのはすごい。ちなみに、受託販売の手数料が15億円ということは、同社のECサイトにおける流通総額はもっともっと大きいということであり、受託事業の商品取扱高は約66億円、自社販売約45億円となっている。合わせた流通総額は約112億円あるということらしい。


この凄まじい成長力と利益率の源泉はどこからくるのだろうか、同社は有価証券届出書において次のように説明している。
その後、平成12年10月にファッションに対して強い関心を持つ顧客層を主要ターゲットとしたアパレル商材の取扱を開始いたしました。現在、インターネット上のショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営しており、(株)ユナイテッドアローズ、(株)ビームス、ディーゼルジャパン(株)をはじめとする主要アパレルブランドからの商品供給体制を確立してまいりました。平成19年9月末現在、92ショップを運営しており、取扱ブランド数は680となっております。常時20,000以上のアイテムを掲載するとともに、日々数百アイテムを新着商品として登録しており、常に最新の商品情報を店頭とほぼ同じ時期に入手する事が可能です。

 サイト上の各ショップはコンピューター・グラフィックス(CG)を駆使し、ブランド各社の実在する店舗を再現したり、建築家の設計に基づいて制作を行うなど、臨場感あふれるものになっております。商品情報に関しては、当社にて商品撮影・採寸を行って情報をデータベース化しておりますが、商品画像の掲載にあたっては、商品イメージがより伝わりやすいよう1アイテム当たりの写真カット数を多くすると共に、モデルが実際に着用して撮影する着せ撮りを活用しております。

2万アイテムにも達する品揃えはネットならではの特性を活かしたロングテール型のビジネスといえるだろう、そしてそのロングテールを構成するのが単なるニッチ商材ではなくてユナイテッドアローズやビームス、吉田カバンといった有名ブランドであるというのが特徴だ。通常、強いブランド、こだわりのブランドを持っているメーカーというのは、ネット販売を他人に任せるのに非常に消極的だ。世界中どこからでも、誰でも、いつでも見ることができるネット上で、変な販売の仕方をされてしまっては、せっかく築き上げてきたブランドに傷がついてしまうリスクがある。だから、ネットショップを開いたからといって誰でもが人気ブランドの商品を扱えるわけではない。

そんななか同社は、ECサイトを丁寧にカッコよくセンスよく作り上げることでブランドの信頼を得ているのだろう。僕のように30過ぎのネットユーザーから見れば、写真やFlashを多用している同社のサイトは、サイトのレスポンスの早さや使いやすさといったユーザビリティの面から疑問を持ってしまうが、同社がターゲットにしている顧客層は僕のような人間ではなくてもっと若くてセンスと感度がよい層なのだろう。そして、そういう層の消費者やそこをターゲットとしているアパレルブランドにとって、あのようなサイトの造りが好まれるのだろうと推測される。

さらには、同社の商品に対する真摯で熱い思いが各ブランドに伝わった結果なのだろう。前澤社長のインタビュー記事に次のようなくだりがある。こういう純粋な想いが人を動かすのだろう。

「あなたのところの商品が好きで、何としても僕のこの思いをお客さんにも届けたい」という感じの営業をしてきたんです。そこにはうそもないし、格好付けることもありません。「そういう心が届いた結果が今なのかな」という気がしてます。

同社のサイトをみていると、何となく一休に似ているなと感じる。宿泊予約サイトの一休は、高級ホテル、旅館に特化することにより他者との差別化に成功し、伸びた。一休の強さは、取り扱っている各高級ホテル等のブランド郡が一休というブランド自体の価値を押し上げている点にある。スタートトゥデイもそこに集まっている有力ブランド郡の力でZOZO townというサイト自体のブランド価値が押し上げられているのだろう。

じゃあ、同社が一休のように中味があまりない会社なのかというとそんなことはない。同社はEコマースを行う上で必要なことに地道に取り組んでいる。再び前澤社長のインタビューからの引用だが、次のようなくだりがある。

今でもそうですけどね。たとえば、デザインやシステムや物流、カスタマーセンターなんかを自社で全部やっているのは、その時の名残です。「なるべく自分たちでやろうよ」って。パンクを聴いている人たちはよく知っているんですけど、「DIY(Do It Yourself)」って言葉があります。僕らのフィロソフィーはまさに「DIY」です。

デザインやシステムや物流、カスタマーセンターなんかを自社で全部やっているというのは真面目だと思う。特に物流やカスタマーセンターなんて労働集約的だし、手間ばっかりかかるから、こういうところをやりたがらないIT企業というのは多いだろう。そんな中、同社はそういっためんどくさい部分にも真正面から取り組んでいる。有価証券届出書によれば、同社の物流倉庫は3,317.16平方メートル(約1,000坪)もの広さがあり、さらに今回のIPOで手にする資金を使って移転拡張する計画らしい。その移転が完了すれば、本社オフィスと物流倉庫が一体となった拠点ができるようだ。Eコマースを営む企業にとって本社オフィスと物流拠点が同じ場所にあるというのは、ある意味で理想の姿だろう。無理して東京に出てきたりせず、千葉の幕張に引っ込んだままそういうことを実現しようとする姿勢は素晴らしいと思う。

同社は、若干32歳の茶髪の社長に率いられた平均年齢24.8歳の若者達の会社だ。今後、同社がIPOを果たし、成長していく過程で否定的な見方をされることもあるかもしれない。それでも、商品に対する純粋な想いとEコマースへの地道な取り組みは本物だろう。本物である同社が、IPO後にどのような成長の軌跡をたどるのか注目したい。

ちょっと褒めすぎの感があるが、もちろん同社にも色々とリスクはあると思う。それについては、各自、有価証券届出書を分析したりして考えていただきたい。

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