2007年11月アーカイブ

先ほど気づいたのだが、僕がこのブログを運営するためにサーバを借りているさくらインターネット株式会社が2007年9月中間決算で多額の特別損失を計上し、債務超過に陥ったようだ。11月22日付で公表された特別損失の発生及び業績予想の修正に関するお知らせによれば、特別損失の中味は次の通り。

○固定資産の減損損失 391百万円
○のれんの減損損失 54百万円
○関係会社株式評価損 98百万円
○投資有価証券評価損 65百万円

もっとも金額が大きい固定資産の減損については、オンラインゲーム事業の不振によるもののようだ。これらの特別損失に加え、繰延税金資産の取り崩し47百万円もあったようだ。9月中間決算に関する開示としては非常に遅いタイミングなので、中間決算監査のなかで監査法人側との調整にかなりの時間がかかったのだろう。

で、11月27日付で公表された中間決算によれば、売上高3,131百万円に対して中間純損失は568百万円、債務超過額49百万円となっている。セグメント別損益を見てみると、次のような感じとなっている。

(単位:百万円) データセンター事業 コンテンツ配信事業 システムソリューション事業
売上高 2,893 89 274
営業損益 414 △187 △27

一見してわかるのが、データセンター事業の収益性のよさとコンテンツ配信事業の収益性の悪さだ。もともとの本業であるデータセンター事業に集中して取り組んでいれば、業績絶好調だったはずだ。一時的に債務超過に陥ってはいるが、データセンター事業に集中して取り組んでいけば立ち直ることは可能だろう。会社側も今後の経営方針について次のように説明している。

当社は、安定した事業基盤の確立に向けて、当社の主軸事業であるデータセンター運営事業に経営資源を集中し、確実に利益を生み出す体質作りに取り組んでまいります。また、当社グループ全体として、事業の採算性・成長性を厳しく精査して不採算事業の整理やさらなる業務効率化に努めるとともに内部管理体制の再構築を図り経営効率を高めてまいります。

ちょっとだけ気になるとしたら、オンラインゲーム事業からの撤退をどこにも明言していない点だろうか。オンラインゲームから撤退して関連資産・人員のリストラをキッチリと行えば、主力のデータセンター事業は半期で4億円の営業利益を稼ぎ出すドル箱である。再建に向けた道も見えてくる。債務超過の解消に向けた資本増強策として会社は次のように説明している。

また、資本増強に関しましては、第三者割当増資を検討しており、すでに、第三者割当増資引受の候補を数社に絞って交渉を開始しております。

データセンター事業の業績は好調なので、第三者割当増資の引受手も前向きに臨んでいるのではないだろうか。注目は、増資の規模とその時の増資株価かな。第三者割当増資の引受側が会社の危機に付け込んで高収益事業にお買い得価格で資本参加してしまうのか、会社側が自分達の価値を正しく認識しフェアな条件を勝ち取ることができるのか、どうなるのだろうか。

いずれにしても、さくらインターネットには今後とも安価で良質なサービスを日本のネット業界に提供し続けてもらいたいと思う。
ビジネス法務の部屋さんで株主優待券の会計処理(その2)というエントリがあった。内容は、ビジネス法務の部屋さんが株主優待券を引当計上することについての疑問、特に使用見込率についての合理的見積もりができないのではないかという疑問に対して、とある会計士の方からきたという「株主優待引当金の計上は原則」という意見を紹介するものだった。

僕が思うに、当面は企業によって引当金を計上したり計上しなかったりというバラバラの状態が続くだろう。会計は一般に事実と慣習と判断の総合的な産物と言われているとおり、ひとつの事実について必ずしも画一的な処理がなされるわけではない。決算期末日等の権利確定日の段階で、合理的に見積もりが可能かどうかは別として、何らかの債務が発生していることは間違いがないだろう。合理的に見積もりが可能かというのは、実質的に見積もり可能かどうかというよりは、「慣習」だったり、「判断」によって決まってくるのではないかと思う。

慣習とはどういうことかといえば、世の中の多くの会社がどうやって処理しているのかという流れだと思う。例えば、今ではすっかり当たり前になったポイントサービス引当金であるが、当初は企業によって計上していたり計上していなかったりまちまちであった。だんだんと、ポイントサービス引当金を計上する企業が増えるにつれて、ポイントサービス引当金は「計上しなければならない」、「計上が原則」なものになっていったのだと思う。したがって、今後、株主優待引当金を計上する企業が増えていけば、いずれかの段階で本当に計上が原則になるときがやってくるのだろう。

判断とはどういうことかといえば、まずは経営者が計上が必要だと判断するかどうかであり、次にその判断を現場の監査チームが妥当と認めるかどうかという判断、そして監査法人内の品質管理(審理)部門が監査チームの判断を妥当と認めるかどうかという判断の組み合わせによるのだと思う。株主優待引当金について、経営者がどのように判断するか、それについて担当の監査人がどのように判断するかというのは、当面は、個々のケースによって組み合わせが異なってくるだろう。

株主優待券の使用見込率を合理的に見積もれるかどうかというのは、実もフタもない言い方をしてしまえば、どちらでも解釈可能だし、どちらの立場に立って言い切ってしまうかどうかだけの問題だと思う。ここ10年ほどの間にそういう会計領域は増えているような気がする。例えば、退職給付債務の計算や減損会計の中で用いられている見積もりが合理的に可能かどうかといえば、かなり怪しいような気もするけれど、世の中、合理的に見積もり可能という前提を皆で無理やり共有して会計処理を行っている。

最後に、ビジネス法務の部屋さんが株主優待引当金の趣旨について示した疑問について考えてみたい。
ポイントを顧客に取得させるというのは、売上とそのための販売促進に向けてのものであって、なんとなく収益と費用との対応が認識できるのでありますが、この株式優待制度を「株主優待引当金」として計上する場合、企業が取得すべき収益という概念は登場してくるのでしょうか?

株主優待引当金を費用収益対応の原則から考えてみると、かなり苦しい理屈ではあるけれど、資本コストの削減ということではないだろうか。そもそもの株主優待の趣旨は、多くの個人投資家を安定株主として獲得することにより株価の安定と流動性を確保しようというものであり、それは自己資本の資本コストを下げようという取り組みなのではないかと思う。ただ、株主優待制度が本当に資本コストの削減に役立っているのかと言えば怪しい気がする。ある個人が、株主と顧客の両方の立場にあるということは、いずれの立場における意思決定も他方の立場による影響を受け、経済合理的な判断と言うのができなくなるのではないか、結果、財・サービス市場側も資本市場側も何らかの市場の失敗が起こっているのではないか、という気がする。根拠もなく適当に書いてるけど。

こう考えてくると株主優待引当金は期間損益計算の適正化というようりは、バランスシートの時価評価という流れの中で捉えた方がわかりやすい。これもここ10年ほどの流れだと思うが、バランスシート上の資産及び負債をできるだけ時価評価する方向にある。金融商品会計基準や固定資産の減損会計、来年度から導入される棚卸資産の低価法なんかは、費用収益対応という観点から説明するのはほとんど不可能で、バランスシートの時価評価という観点が大きいのだろう。決算日現在で、株主優待の権利確定に伴う何らかの債務が発生しているのであればそれをきちんとバランスシートに載せなさい、ということなのだろう。

みんなが大好きなさわかみファンドであるが、今日はちょっと違う角度からさわかみファンドの分析をしてみたい。さわかみファンドは公募投資信託なので毎年有価証券報告書を提出している。そしてその有価証券報告書には、ファンドの情報だけでなく「委託会社等の概況」という運用会社の情報も開示されている。すなわち、さわかみファンドの運用会社であるさわかみ投信株式会社の情報も載っているのだ。

で、調べてみたのが上記のグラフでさわかみ投信株式会社がどれくらい儲かっているのかというもの。緑色の棒グラフで示したように売上高はものすごい勢いで伸びている。そしてオレンジ色の棒グラフ経常損益も、2000年から2003年にかけて赤字を計上していたものの、その後はものすごい伸びだ。2007年3月期は、売上高18億円、経常利益9億円という素晴らしい数字をあげている。経常利益率50%超なんてとてもすごい数字だ。

なんでこんなに業績がよいのかといえば、ファンドの純資産が順調に伸びているからだろう。2007年3月末現在のファンド純資産は2,400億円にも達している。さわかみファンドの信託報酬は1%だから単純に計算すれば、2,400億円の1%、24億円を運用会社であるさわかみ投信とカストディー業務を行う日興シティ信託の2者で山分けである。正確には、山分けというよりは儲けのほとんどはさわかみ投信のものとなっているのだろう。

じゃあ、さわかみ投信の儲けたお金はどうなっているのかと言えば、当然さわかみ投信の株主のものである。有価証券報告書によれば、さわかみ投信の株主は1人のみでさわかみ合同会社である。で、さわかみ投信は儲けたお金を株主であるさわかみ合同会社に還流させるために、2007年3月期中に3億円もの自社株購入を行っている。配当ではなくて自社株購入という形をなぜ採ったのか理由はよくわからない。

さわかみファンドは儲かる。しかもとっても儲かる。そして確実に儲かっているのは、ファンドのホルダーではなくて運用会社であるさわかみ投信とその株主だ。

ふとしたきっかけで大塚製薬グループの資本関係を調べてみたら、これが思っていた以上に複雑で奥深いものだった。

大塚製薬は未上場優良企業として有名であるが、EDINETで検索をしてみると有価証券報告書を提出していることがわかった。株式の状況を見てみると、未上場ながら株主数が5千人もいる。大株主を調べてみると筆頭株主は大塚化学ホールディングスで大塚製薬に15.2%出資している。

念のため大塚化学ホールディングスをEDINETで検索してみると、こちらも未上場会社ながら有価証券報告書を提出していることがわかった。こちらも株主数が5千人もいる。大株主を調べてみると筆頭株主は大塚製薬工場で11.2%の出資だ。で、大塚製薬工場は大塚製薬が60%出資する子会社である。あれ。1週してしまった。というわけで調べながら判明した点を図解したのが上記である。情報源は主に各社の有価証券報告書であり、全て一般に公開されているものである。

調べてみた点、図解の内容などを箇条書きにすると次のようになる。

○大塚製薬グループには未上場ながら有価証券報告書を提出している会社がある
・大塚製薬株式会社
・大塚化学ホールディングス株式会社
・大鵬薬品株式会社

○上記3社のうち大塚製薬グループの中核ともいえる大塚製薬株式会社と大塚化学ホールディングス株式会社については、株主数がそれぞれ5千人もいる。2社とも上位大株主の持ち株数を足しても半数に届かず、過半の株式が広く散逸しているものと推測される。

○大塚製薬グループには上場企業もある
・アース製薬株式会社
・ニチバン株式会社
・株式会社阿波銀行 出資比率は小さくグループ扱いはされていないが大塚製薬グループが筆頭株主

○大塚製薬グループの未公開株をめぐっては詐欺等も起きているようである。
当社株式に関するお知らせ(大塚製薬HP)


業績絶好調の優良企業である大塚製薬グループだが、資本政策の面で大きな課題を抱えているようだ。グループ企業間の資本関係をきれいに整理する必要があるだろうし、多くの個人株主に散逸してしまった株式を何とか整理する必要もあるだろう。

グループ企業の資本関係の整理に当たっては、会社法で用意されている様々な組織再編の仕組みと税務上の制度(特に法人および個人への課税を抑えるように)を組み合わせながらスキームを作っていく必要があるだろう。また、散逸してしまった大塚製薬と大塚化学ホールディングスの株式の方は、もっと頭が痛い問題だろう。株主名簿の書き換えに取締役会の承認を要する譲渡制限会社とはいえ、自社の株式の過半を実質的にどこの誰が保有しているのかわからない状態と言うのはこわいのではないか。

上場を目指しているという記事が日経に書かれたこともあるようだが、上場するのであれば資本政策面の2つの課題をクリアする必要があるだろう。もし僕がスキームを組むのであれば、LBOを使うと思う。創業家一族、経営陣、従業員、法人株主で組んでビークルを作り、デットで資金を調達する。で、たくさんいる外部株主をスクイーズアウトさせる。大塚製薬と大塚化学ホールディングスの株主構成が落ち着いた段階で、丁寧にグループ内の資本関係を整理していく。同時に、毎年のキャッシュフローを借入金の返済に充てていく。グループ内の資本関係の整理が終わった段階で上場すればよいだろう。上場時の株式売出で得た資金を残っている借入金の返済に充てることもできる。というわけで、僕ならたくさんいる外部株主にお引取り願うところからはじめる。そうしないと重要な意思決定をするために、株主総会を開催するのも大変だろう。

これだけの大規模優良企業なので既に実力のあるアドバイザーがついているのではないかと推測するが、今後どういう展開を見せるのか要注目である。
梅田望夫さんの新著「ウェブ時代をゆく」を読んだ。ちゃんとした感想とかは時間があるときにゆっくり書きたい。今回は、梅田さんが提示した「けものみち」というコンセプトを自分にどう当てはめるか考え始めたことを書いてみたい。「ウェブ時代をゆく」の中で「けものみち」は次のように定義されている。

専門性や志向性の複合技で個の総合力を定義し、その力で自由に社会を生きていく。それが「けものみち」を歩くということだ。

僕にとっての専門性はある程度明確だ。企業会計に関するリテラシーであり、そこから派生したコーポレートファイナンスに関するリテラシーだ。学生時代に試験勉強に没頭したことから、新卒で就職する時には高速道路を走るための切符を手に入れることができた。そして5年間疾走してから高速道路を降りた。渋滞にたどり着いたのか、渋滞がもう少し先にあったのかは実はよくわかっていないのだが、「高く険しい道」を行っても面白くなさそうなのは確かだった。実際には、僕が走っていた高速道路(巨大会計事務所)と並行してもっと広くて快適な高速道路(投資銀行とか)があるのだろうが、田舎の県道(小さなベンチャー)とかを走りながら、どうやってサバイヴする能力を高めるか、そんなことを考えながら過ごしてきた。単に会計事務所出身、単に投資銀行出身というだけでは、本当にビジネスで通用する専門家レベルには達しないと思うが、達してしまっている人が少ないわけではなく、競争は厳しいと思う。

次に志向性。まだぼんやりとはしているのだけれど、情報通信分野にかんする興味というのはひとつ挙げられるのではないかと思う。もちろん文系の僕のリテラシーというのはとても低くて、「ウェブ時代をゆく」の中で梅田さんが「ほんとうの助言」として定義した「ウェブ・リテラシー」のレベルには全く到達していない。それでも、ウェブがもたらす大変革をポジティブにそして楽しみに迎えようとする心境、(単にユーザーとしてだけだが)ウェブへの没頭などからすると、僕の志向のひとつはここにあるのではないかと思う。ウェブやコンピュータ、情報通信産業への興味と言うのは社会人になったばかりのころから強かったような気がする。文系出身の僕がなんでこの分野に興味を持つようになったかと言えば、さっき思いついて「あ~。そういうことか。」と思ったのだけれど、父親の影響なのではないかと思う。僕の父親は、工業高校卒業後に入社した通信キャリアで現場のエンジニアとして会社員人生をスタートして、そして現場のエンジニアのまま定年を迎えた。父親は電子機器とかが根っから大好きな人で、家の中にはいつもよくわからないガラクタが転がっていた。僕はその影響を知らず知らずに受けていたということなのだろう。

さて、戦略をもっと明確にして、何かをやり始めなくてはね。そしてやり続けなくては。

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