2007年8月アーカイブ


分不相応にもDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューの9月号を買って読んでいる。中身はここに載っているとおりで特集は「脱管理主義のリーダーシップ」となっている。よりによって、僕が最も知見を持っていない分野の特集だ。並んでいる記事のレベルが僕のレベルよりも2週半くらい先を行ってしまっているので、読んでいてもよくわからない記事ばかりだ。

なんで、そんな読めない記事ばかりの雑誌を買ってしまった(しかも1冊2,000円もする)のかというと、知人から「今月号の『サミット症候群 学習曲線のピークで失速する人々』という記事が面白いよ」というメールが来たためだ。記事を読んでみると、確かにその知人の場合はサミット症候群とか当てはまるのかもしれないなという感じだった。

せっかく2,000円もする雑誌を買ってしまったのでパラパラとめくりながら色々な記事を読んでみると、たまに僕でも読めるような記事とか、面白い記事も載っていたりする。例えば、「CEOコンパクト 上司の期待と部下の期待の両立」という記事。題名のとおりリーダーの仕事がコンパクトにまとまっていて読みやすい。また、リーダーの仕事は次代のリーダーを育てることなんだな、というのが伝わってくる。いや、僕にはぜんぜんできていないことだけれど。

ゼネラル・エレクトリックではジャック・ウェルチの片腕として、またアライドシグナルとハネウェルではCEOを務めたラリー・ボシディは、何よりリーダー人材の育成に尽力してきた。その経験から、リーダー人材の行動モデルをまとめたものが、本稿で紹介する「CEOコンパクト」である。

あとは、『立石一真ものがたり「できません」と云うな』も面白かった。オムロンの創業者の立石さんの伝記。あまりに面白いので、このシリーズを読むためにバックナンバーとか次号以降とかも買い続けようか迷っている。どうしようかな。

ドバイの不動産ディベロッパーとしてEmaarと双璧を成すNakheelのプロモーションビデオを見ていたら"the only limit is the imagination"というフレーズがでてきた。(ちなみに上掲の動画とは別の"The World"のプロモーションのやつ)

想像力の限界が現実の限界を決めるということなのだろうが、逆に言うと、想像可能なことは全部実現できるということなのだろう。で、実際に彼らは、壮大で夢のようなプロジェクトを着々と実現している。少しでも彼らを見習い、自分の中で勝手につくっている色々な制約を減らしていこうと思った。難しいけれど。
つい先日、サブプライム問題に狼狽してそれまで数年間保有していた中国株を全て投売りしたばかりであるが、今度は再投資することにした。

中国株を投売りした後、市況を見ているとどうも香港の相場が活況を呈している。よくよく原因を探ってみると、20日の中国政府の発表(記事)が原因らしい。

 中国は20日、香港株を手始めに個人の海外株式への直接投資を解禁すると発表。年5万ドルという外貨購入制限を適用せず、現時点では投資の上限は設けていない。

中国本土の投機的な個人マネーが香港に向かうことが期待される。しかも、今なら、上海や深センに上場しているA株と同一銘柄のH株が香港市場では割安に手に入る。これだけ大規模な裁定機会が待っているということはめったにない。これに似た状況は2001年2月のB株の中国国内投資家への解禁である。あの時は、割安なB株がものすごい勢いでA株に鞘よせされた。


というわけでH株指数(Hang Seng China Enterprises Index )に連動するETFに投資した。が、H株指数のチャートを見ての通り、1週間出遅れたので少し騰がってしまっている。もう少し早く気づきたかった。
個人的には、いわゆるJ-SOXと呼ばれる法規制について大きな疑問をもっているので、これに係わる仕事はできるだけしないようにしようとしてきた。疑問というのは、SOXのアプローチでは、その目的である投資家保護にあまり役に立たない一方で企業活動を停滞させることによって、経済全体の足を引っ張るのではないかということだ。これについては、機会があったら丁寧に書いてみたい。

しかし、日本でも法制化もされてしまい、制度の運用開始まで秒読みとなった今、上場企業各社はこれへの対応のために膨大な労力をかけていることだろう。この千載一遇のチャンスに、会計士業界、ITベンダー、各種コンサルがSOX関連のビジネスを繰り広げている。会計士業界の多くがSOXに関連してやっていることはボッタクリであり、同業界に身をおくものとしては非常に嘆かわしい。会計士やITベンダーがボッタクリをしても、成果が出ているのならいいのだが、プロジェクトがグダグダとなってしまった事例などもちらほら聞こえてくる。

そのような惨事を避け、J-SOXプロジェクトを成功に導くにはどうしたらよいのだろうか。成功の鍵は、経営者が内部統制というものに対してどれだけ正しい理解をしているかにかかっている。そもそも内部統制というのは、経営者が企業経営を行う上で、業務の効率性や有効性、財務報告の信頼性、法令順守などを担保するためにデザインし、用意する仕組みだ。COSOの定義では次のように書かれている。

Internal control is a process, effected by an entity's board of directors, management and other personnel, designed to provide reasonable assurance regarding the achievement of objectives in the following categories:
  • Effectiveness and efficiency of operations
  • Reliability of financial reporting
  • Compliance with applicable laws and regulations

繰り返しになるが、内部統制は経営者が自分のために企業内の様々なプロセスに組み込んでいく仕組みだ。企業活動が巨大に、そして複雑になって経営者自身が末端の業務まで目が届かせることができなくなったとしても、経営者が企業活動全体を把握し、グリップを効かせるための仕組みだ。であるならば、内部統制整備は経営者の視点、意向に沿ってトップダウンで行うべきであるし、何をやり、何をやらないべきであるかというのも、経営者の視点、意向に沿って行うべきだ。ITベンダーや似非コンサルタントにだまされて、対処療法的なアプローチやボトムアップ的なアプローチを採ってしまうと、時間とお金をかけても、プロジェクトの成果というのは悲惨なものになるだろう。

というようなことを、(僕がもうすぐ退職する)現在の勤務先の経営者の話を聞いていて考えた。幸いなことに、現在の勤務先の経営者は内部統制の意味をかなり正しく理解している。言っていることが非常に真っ当で正しいので、「へぇー」と心の中で思ってしまった。どこかで勉強したのか、経営者としてそういうセンスも自然に身につけているのかはよくわからないが、とても感心した。
数年来の知人で、当時、A社の財務部長をしていたB氏と飲みに行った。B氏は今もA社にいてCEOをしているとのことだった。

そのA社は、日本の超大企業と米国のベンチャー企業との合弁企業なのだが、僕がB氏と知り合った当初、A社の業績はとてもひどいものだった。赤字を垂れ流していたし、キャッシュの残高も着実に減っていた。どんなに赤字を出しても、超大企業の規模からすればゴミのような金額であったし、お金が足りなければ増資すればよいだけの話だ。従業員の過半が超大企業からの出向であったこともあり、緊張感をもってA社の経営にコミットしているような人はあまりいなかったようだ。

B氏も超大企業からの出向なのだが、B氏が着任してからの業績の立ち直りというのは見事だった。B氏は、まず、無駄なコストを徹底的に絞るリストラからはじめた。数ヶ月のうちに、キャッシュフローが黒字化し、そしてPL上の月次損益も黒字化した。そして、営業の梃入れを行い、地味だけど確実に売上が増え始めた。そして、B氏は今CEOとしてA社を経営し毎年の増収増益を達成している。

普通に考えれば、A社とB氏には色々な逆風が吹いている。A社の商品が属するマーケットが成熟してしまっており、そんな市場で今更成長を目指すのは簡単ではない。A社の商品自体の競争力も微妙だ、確かに面白いテクノロジーを利用しているのだが、そのセールスポイントの顧客にとっての重要性はそれほど大きなものではないだろう。そして人材、日本側超大企業からの出向者数名と後はプロパー採用の社員10数名が戦力の全てだ。零細企業なのでいい人材を採用するのは難しいし、親会社もいい人材はちょっとだけしか回してくれないので、本当に使える人材はほとんどいないとのことだった。さらに、日米の両株主は口だけは色々とだしてくるので煩いとのことだった。

さして有望でもないマーケットで、優秀というわけでもないチームを率いて、特別な魅力があるわけでもない商品を売る。そんな中、B氏は増収増益という結果を出し続けている。経営力があるというのはB氏のような人のことを言うのだろう。B氏の経営力の真髄はどこにあるのか、話を聞きながらヒントを探したがよくわからなかった。ひとつ印象的だったのは、B氏が非常に冷めているということだ。B氏は、マーケットにも親会社にも従業員にも何ら期待をしていないようだった。独立心が強く、甘えがないような印象だ。例えて言えば、所与の条件の中でパズルを解くように打ち手を繰り出している。成熟したマーケットの中でも、自社商品の強みが活きるより有望なセグメントを探し、従業員の良い面を引き出し活躍させる。

当たり前のようだけど難しいことを淡々とこなしてしまっているB氏に強い刺激を受けた晩だった。
・世界一やさしい問題解決の授業

イェール→マッキンゼー→HBS→マッキンゼー→独立、という華麗な経歴の著者が、問題解決のエッセンスを子供向けに優しく解説した本である。内容は次の通り。

1限目では、自分で問題を解決することのできる人を「問題解決キッズ」と名づけ、それはどのような人なのか、問題解決の流れはどのようなものなのかを、ひととおり解説します。
2限目では、中学生バンド「キノコLovers」がより多くの人にコンサートに来てもらうためにはどうすればよいのかを、問題解決の手法を使って解く例を紹介します。
3限目では、CGアニメの監督になることを夢見るタローくんが、まずパソコンを手に入れるために具体的な目標を立てて、達成する方法を考え出す例を紹介します。

正直なところ子供向けの本として適当かどうかはよくわからない。おそらく中高生くらいをターゲットとした本だろうと思うが、中高生が興味を持って読むような内容かどうかわからないし、普通の中高生に容易に理解できる程度までわかりやすい内容かどうかもわからない。

それでもこの本は素晴らしいと思う。ひとつは、子供向が問題解決の手法を学ばせようという、理念というか目標というか、志の高さが素晴らしい。もうひとつは、問題解決のような難しい内容を理解しやすく、わかりやすい内容の本に仕上げているからだ。先ほど書いたように、子供向けの本としてわかりやすいかどうかは疑問が残るのだが、問題解決とか論理的思考系の本としては、ピカイチのわかりやすさである。それ系の考え方を少しでもかじったことがある大人であれば本書の内容は理解しやすいし読みやすいだろう。実は大人向けにもオススメの本だ。

世の中には、難しい内容を分かりやすく解説しようとして見事に失敗している事例というのが非常に多い。そんな中、本書は問題解決という分野でその困難な試みを成功させた非常に稀有な事例である。そして失敗事例が山積していて未だ成功事例が存在しないのが会計分野である。いつか、ナ・トワの「すべてのひとに最善の会計リテラシーを」プロジェクトが最初の成功事例となることを目指してがんばりたい。
はてなの益田に書かれた背伸びして上場を目指す経営者に対する10のお願いというエントリが人気を集めていた。

人事総務財務部門の管理職として、経営者と従業員に挟まれ、投資家や株主、銀行その他などと対峙しながら、IPO前とIPO後を担当してきた僕としては、こういう記事を読むと色々と思うところが湧き出てくる。あまりに色々な想いが交錯するので、この中で出てくるストックオプションについて書いてみたい。

ストックオプションは財産を増やすための道具ではありません
増してやあなたの私腹を肥やすための道具ではありません。

必死になって現場で頑張っている社員の多くはあなたが持っている株と比べればカスくらいのストックオプションすら持っていません。上場におけるあなたの役割は大変重要なのはわかりますし、立場上株を持ち続けなくてはいけないことも理解しています。しかし、大したオプションも与えられていない社員からしてみれば十分な議決権を持っているあなたが、必要以上にストックオプションを自分に対して発行するのは金の亡者に見えてきます。

また、政治的な目的で発行されたストックオプションは上場するために必要なのかもしれませんが、社員のモラルを低下させます。

上場まで頑張ってきてくれたみんなに対する感謝を込めてストックオプションを渡してください。また、大して利益にもならないストックオプションを渡すくらいなら普通にボーナスを出したほうがみんな喜ぶと思います。

まず、普通の社員というのはストックオプションについてほとんど知識がないし、関心も持っていないことが多いのではないだろうか。なので、経営者が持っているオプションの数と自分が持っている「カスくらい」の数を比べて文句をいうような人はあまりいない。また、「政治的な目的で発行されたストックオプション」というのが存在する会社もあるのだろうが、そのような発行の存在が一般社員に知られる可能性というのは小さい。オプションを発行するたびに社内に、その詳細を周知する会社なんてないだろうし、オプションの数と保有者とかが完全にディスクローズされるのは、上場にあたっての目論見書においてである。それでも普通の社員は、目論見書の存在も知らなければ、読み方も知らないことが多い。そういった意味では、ストックオプションの配布方針が社員のモチベーションを上げたり下げたりする効果というのはほとんどない。残念ながらモチベーションを高める効果というのもほとんどない。ストックオプションの意味を正しく理解していない場合が多いので、それをもらう意味が正確には理解されないし、まして「一生懸命働いて株価を上げよう」ということになる可能性は低い。結局、上場後とか後になって"棚からボタ餅"で儲けて「ストックオプションて、そういうことだったのか」と理解する社員が多い。

「ストックオプションを渡すくらいなら普通にボーナスを」というのは、割と真っ当な感覚だと思う。新興企業やベンチャー企業でストックオプションが多用されていたのは、経営者から見てそれが「タダ」で渡せる給料だったからだろう。ストックオプションを発行すれば、当然に資本コストがかかっているのだが、その目に見えないコストについて実感を伴って把握してる経営者というのはあまり多くない。昨年からストック・オプション等に関する会計基準(企業会計基準第八号)が適用されるようになり、今まで目に見えなかったコストが見えるようになったので、世の中の経営者の考え方も変ってきている。オプションの価値を計算してみて、要費用計上額の多額さに驚いているケースも少なくないだろう。こんなに費用を計上するのであれば、現金で渡したほうがましだ、という風に考えるのも自然だ。費用計上と一言で言っても、企業の担当者としてはなかなかに厄介な論点が多い。オプションの発行をどのくらいの規模で行い、どのくらいの範囲を対象に付与するか、そしてそれは予算上許容できるかといったところを判断するためには、要費用計上額すなわちオプションの価値がわからないとできないのだが、このオプションの評価というのが簡単ではない。"金融工学の専門家"とかに頼んだりすると1回数十万円から数百万円かかる場合もある。なので、前提条件を色々と変えてたくさんのパターンをシミュレーションする、といったことがやりにくかったりする。なのでExcelによるストックオプション評価とかをうまくつかいこなせると、オプションの価値を正しく把握して、報酬制度の一環をなすストックオプションを適切に利用することができる。
AT&Tの分割と合従の歴史をネタにしたコメディ動画がある。


AT&Tは、その巨大さゆえに独占禁止法に抵触するのではないかということで、米国司法省との10年越しの闘争の末、1984年に分割された。分割当初、電話部門は長距離会社1社(AT&Tの名を引き継いだ)と7社の地域会社(ベビーベル)に分かれていた。そして分割から20数年経った今、残っているのは新生at&tとVerizonとQwestの3社しかなくなってしまった。ちなみに、新生at&tはベビーベルの1社であるSouthwestern Bellが他のベビーベルを次々と吸収し、最後には本家ともいえる長距離会社まで吸収してしまったものである。


iPhone関連のニュースとかブログなどを見ていると、AT&Tの加入者でないとiPhoneをつかえない旨が載っていたりする。AT&Tの携帯っていうと、何年か前にドコモが1兆円出資して大やけどしたあのAT&T Wireless Services, Inc.か?とか思ってしまうのだが、現在のAT&T Mobility LLCは、新生at&tの母体となったSBCとBellsouthの合弁事業であるCingular Wireless LLCが社名及びブランド名を変更したものらしい。で、あのAT&T Wireless Services, Inc.は2004年10月にCingular Wireless LLCに吸収されている。ややこしいね。

AT&Tの歴史はこのほかにも、米国の通信業界の激動を物語っている。製造部門だったLucentの分離とそのLucentの仏Alcatelによる買収、TCIなどのケーブルテレビの大買収とスピンオフそしてライバルComcastによる買収。

さて、日本のNTTの再編は今後どうなっていくのだろうか?
僕は、人から「アンテナの感度がいいね」といわれることがたまにある。ネット上の面白いもの興味深いものを見つけてくるのがうまいように見えるとのこと。しかし、僕の情報源といえば、RSSリーダーとSBMしかないわけで、僕が見つけるようなものは既にかなりメジャーになっている。ぜんぜん速くはないし、個人的には、「遅い」と感じている。本当に。それでも、世の中全体から見れば、比較的初期の段階でネット上のいろいろなものに手を出しているのだろう。キャズムの用語で言えば、アーリーアダプターくらいではないかと思う。

ふと、そんなことを考えていたのは、今日の昼間、仕事場で世間話をしている時にニコニコ動画の話題をだしたら全く通じなかったりとか、youtubeと角川書店が提携した背景には「涼宮ハルヒの憂鬱」があるという話とかも全く通じなかった。ハルヒって誰でも知っているのかと思っていたが、勘違いだったようだ。私の提起した話題は少しだけ関心を持ってもらえたものの、その場の話題は別の人が提起したセカンドライフに移ってしまった。確かに日経新聞を読んでいれば、セカンドライフは盛り上がっていそうだし、何かすごい可能性を感じてしまうのかもしれない。しかし、ユーザーとして実際に使ったことがあれば、ニコニコ動画の圧倒的な熱量には未来を期待したくなるし、セカンドライフにはブームを無理やり作り出そうとしている不自然さを感じるのではないだろうか。

さて、この微妙な感度の僕のアンテナは何かに役に立つのだろうか?僕は、今から8年前、1999年6月というかなり初期からの2ちゃんねらーなのであるが、これが何かに役立ったということは全くない(笑)。
サブプライム問題の行方については正直よくわからない。複数のシナリオが考えうるが、僕が推測する両極端なシナリオは次の2つ。

シナリオ1:世界中同時不況

証券関係者や運用関係者は、かなり自信を持って「サブプライムの影響は限定的」と主張する人が多いのだが、そう言った意見はサブプライムそのものにしか注目していないためにでてきているものと推測される。しかし、現在のマーケットは金融経済も実体経済も、グローバルに連環し、そして複雑に絡み合っている。ふとしたきっかけが、世界経済のどこかで、予想外の帰結をもたらすことは十分に考えられる。しかも、グローバルなマネーは究極の効率を目指して巨大な規模で極端な動きをした結果、実は極度に歪んでいる箇所が世界経済の中に散在している。中国のA株とかね。そうした極端なゆがみは、ふとしたきっかけではじけ飛んでしまったとき、その後の連鎖がどうなるかわからない。「実体経済(企業業績)はしっかりしているのだから」という意見もあるだろうけれど、金融経済の混乱は逆資産効果による消費の冷え込みとかで、実物経済に影響を与えることもあるだろうし。好調な金融経済のおかげで見てみぬフリをすることができていた実物経済の矛盾とかが吹き出てくる可能性も考えられる。

シナリオ2:日本株バブル

円キャリー取引の解消がすごい勢いで行われている。結果、巨額の資金が日本国内に戻ってきている。このお金の行き先はどこになるのかと考えた時、株式や不動産に向かう可能性が想起される。他に持って行き先がないしね。まあ、いきなり不動産とかではなくてまずは“安全な”国債をはじめとする債権に向かうかもしれない。債券市場にお金が流れ込むと、債券価格が上昇して金利が下がる。円高で、低金利で、過剰流動性。これって、昔どこかで見た風景だよね。というわけで、バブルが再来するというシナリオも考えられる。

こういう環境下で、僕が一部ポジションの整理に走ったのは、リスクをかなり嫌ったからだ。プライベートな事情により、数ヶ月とか1年とかのスパンでみてリスクを許容できなかったのである。投資のタイムホライゾンを数年単位で長く見ることができるのであれば、もう少しリスク許容度は高かったのかもしれない。

この全面的な下げ相場を“絶好の買い場”と捉える逆張りな人もいるようだが、本当に賢明な投資家はこの相場で売ることもしないが、買うこともしないだろう。賢明な長期投資によるリターンから見れば、今回のような下げ相場は、まだまだ誤差の範囲に過ぎない。少なくとも、慌てて買いに入るような局面ではないだろう。
そもそもサブプライムとは何か?はてなダイアリーのキーワードには次のように載っている。
低所得者層や、延滞など事故歴がある信用力の低い消費者に住宅購入資金を貸すローン。審査基準を甘く設定している代わりに、金利は高い。住宅市場の活況化に伴って、住宅ローン会社は貸出し条件を緩和した非定型ローンによって問題含みの借り手からも借入需要を喚起してきたが、2006年以降米住宅市場の景気後退によってサブプライムセクターの信用収縮が進行している。ニュー・センチュリー・ファイナンシャルなどサブプライムローンを専門に扱っているローン会社が資金繰り難から実質破綻に追い込まれている。一方米国で積極展開していた英HSBCが巨額の引当金を積んだことも話題になった。

2007年6月には、クレジット市場の乱高下により巨額の損失を計上したヘッジファンドの存在が明らかとなり、7月現在も混乱は続いている。

次の記事に載っている欧州中央銀行の姿勢が、このサブプライム問題の大きさを示している。
欧州中央銀行(ECB)は9日、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を契機とした信用不安の発生・拡大を防ぐため、欧州金融市場に約948億ユーロ(約15兆4000億円)を緊急供給した。高リスクのファンドの解約申請や金融株の下落が続く中で、市場不安を緩和するのが狙い。ECBによる大規模な緊急資金供給は2001年の米同時テロで金融市場が世界的に動揺して以来初めて。米国とカナダの金融当局も協調する姿勢を示している。

結局このあと、米国のFRB、日銀といった各国の中央銀行もECBに強調して短期金融市場に資金を供給して信用不安の収束に努めた。日米欧の中央銀行が協調して巨額の資金をつぎ込むほどの大事なのだ。

一方で、サブプライムが住宅ローン全体の貸し出しに占めるサブプライムの比率は10%程度であることを根拠に、この問題の影響が限定的であるという論調も存在する。ひどいものになると次のような議論さえ存在する。
複雑なお金の流れで分かりにくい話ではありますが、サブ・プライム・ショックの波紋が米国株式に与える影響は少なからずあるでしょう。しかし、それは、「システムリスクの恐れはない」というFRB理事の発言にあるように、今の世界で消化できないほど巨大な問題ではないということはいえます。

私たちのポリシーを変える必要のあるディープ・インパクトではないようです。安心して、前へ進みましょう!

このように「安心」と言い切ってしまう根拠は、意訳すると「サブプライムはヘッジファンドとかに投資している人の問題だから、現物の日本株に投資している限りは心配ない」ということらしい。この程度の認識で、グローバルなマネーの動きが全く見えていない人物がプロのFPというのだから嘆かわしい。

この問題の本質は、米国の住宅バブル崩壊のきっかけになりうるという点にある。住宅価格の上昇→資金の流入という→住宅価格の上昇というバブルのサイクルが逆回転を始めるとどうなるのか?サブプライムから始まった深刻なバブル破裂には次のように解説されている。
米国のサブプライムローンの残高は住宅市場11兆ドルのうち、約1.1兆ドルといわれ、日本円にして約130兆円、これに買い手がつかなくなっているのだ。サブプライムローンのデフォルト率は現状では7%程度というが、問題となっているのは、そのうちの4分の3がARM(金利調整型モーゲージ)であることだ。これは、2007年~2008年には金利改定による利払い増加を要求されるローンだが、住宅価格が下落局面に入っているから、金利改定どころか、借換も不能になり、デフォルトは急拡大する。潜在的な不良債権額はいくらになるか予測不能なのだ。住宅ローンの価格が下がれば、ホーム・エクイティ・ローンにまで波及する。その規模は、住宅ローン市場全体の10%を超える額である。

このようなバブル崩壊に瀕して、賢い本当のプロの投資家達はどのような行動をとっているのか?ものすごい勢いで、リスクポジションを解消して、流動性を確保しようとしている。ポートフォリオの中で日本とか新興国とかに配分していた資金を引き上げ始めている。例えばこのような記事がある。
東証と大証の発表によると、7月第4週(23日~27日)の外国人投資家の売買動向は現物で2870億円、先物で6521億円、合わせて9391億円の売り越しとなった。現物の売り越しは12週ぶり。これまで現物が月間1兆円規模での大幅な買い越しを続けていたため、外国人投資家は「買い越し」という印象が強かったが、その一方で先物は売り越しとなることが多かった。それが7月第4週は両方合わせて1兆円近い売り越しである。明らかに、外国人投資家売買のスタンスは変わったとみる関係が増えてきている。

個別の銘柄の動きを見ていても、プロの投資家達が逃げ始めている気配が見えるケースが出てきている。このタイミングで買いに入る個人投資家は、90年代のバブル崩壊の時にゆとりローンを組んで住宅を掴まされてしまった人と同じような損失を被るのではないかと推測される。

僕はとりあえず、保有している中国株を全部売却し充分に儲けた含み益を確定さた。さて、この意思決定が3ヵ月後、半年後、1年後に吉とでるかどうか。
一昨日のことだが、株式会社ドワンゴの2007年9月期の第3四半期決算が発表されていた。連結子会社の株式会社ニワンゴが運営するニコニコ動画の運営コスト負担が重く赤字決算となっている。連結営業赤字は260百万円である。セグメント別損益を見ると、ニコニコ動画が属する「その他事業」の営業赤字が611百万円で、これが連結営業損益全体の足を引っ張っているのが一目瞭然だ。通期業績予想では営業赤字700百万円となっており、更に赤字が拡大するようだ。

ただ、赤字を垂れ流しているとはいえ、ニコニコ動画の爆発的な成長には大きな可能性を感じてしまう。次の図はalexaでニコニコ動画のサイトランクを調べたものである。わずか半年ばかりの間での急激な立ち上がり方もすごいし、(比較のために載せた)アマゾンのような巨大サイトを既に追い越してしまっているのもすごい。ちなみに、ニコニコ動画のランクは本家の2ちゃんねるも追い越している。alexaのデータは母集団が偏っているとか色々と言われているが、厳密なトラフィックやリーチは別として、このトレンド線が示すニコニコ動画の勢いが強烈過ぎるというのは事実だ。


さて、ドワンゴやニワンゴのひろゆき氏は、このお化けのようなサービスをどうやって収益化していくのだろうか?3ヶ月ほど前に公表されたドワンゴの中間決算説明会の資料では、資料全体の3分の1超のページが割り当ててにはニコニコ動画のビジネスモデルについての説明が行われている。この資料の中で、収益モデルの方向性として、次の4つが示されている。

􀂋プレミア会員(¥525/月)
􀂋有料コンテンツ(課金サービス)
􀂋広告モデル
􀂋モバイル版「ニコニコ動画」

これらの収益モデルは、彼らの思惑通りに確立するのだろうか?少し整理して考えてみたい。次の図は、動画ビジネスのポジショニングをマトリックス上に整理してみたものである。横軸は、コンテンツの中身を、いわゆるCGMとしてユーザーが増殖させているものなのか、版権物として商業ベースでの制作費回収を前提として製作されたものなのかで分けてみた。縦軸は収益モデルを、要するにユーザーへの課金なのか、スポンサーからの広告なのかで分けてみた。


僕の理解では、現状のニコニコ動画は左下の象限に位置している。わずかばかりのバナー広告とニコニコ市場によるアフィリエイトによる収入しかない。ちなみにYouTubeもこの左下の象限に位置している。YouTubeとニコニコ動画の比較については、暇があれば別の機会に書いてみたい。

ニコニコ動画が既に導入したプレミア会員というのは、左上の象限に移動しようという目論見である。短期的には、このプレミア会員が成功するかどうかがビジネスとして成り立つかどうかの鍵を握っている。モバイルではなくPCの世界でこの会員に対する月額課金というのが成り立つのかどうか要注目である。

有料コンテンツというのは右上の象限の話である。版権動画をユーザー課金で配信するというのは、結構ベーシックなモデルで20年前とか(正確には知らないが)からレンタルビデオという形で存在する。今であれば、レンタルDVDにセルDVD。それが少し進化したのが、通信衛星を利用したCS放送のモデル。インターネットを利用したのがiTunes Storeということだろう。陳腐な表現になってしまうが、インターネットのブロードバンド接続の爆発的な普及とムーアの法則によるストレージデバイスや通信設備のコスト低下を考えると、この右上のモデルは非常に有望である。

この版権コンテンツのユーザー課金という有望な市場をめぐっての争いはこれからが本番だ。これから様々な企業が参入し覇権を争うことになるだろう。現状において、iTunes Storeが圧倒的なポジションを確保してしまったように見えるが(動画はまだまだイマイチで音楽メインだけど)、その地位は磐石なものではなく意外と危うい。そもそも、電波帯という限られた資源により参入が制限されている地上波の民放などとは異なり、このビジネスへの参入は自由だ。iTunes Storeの強さの源泉は、iPodという音楽用ポータブルデバイスの普及個数にある。川下の顧客(ユーザー)を押さえてしまっているから、ユーザーに配信したいコンテンツ製作者はアップルと組まざるを得ない状況にある。しかし、動画を見るのに外でiPodというシチュエーションは少ないだろう、多くは屋内でテレビやPCを使ってである。デバイスによるユーザの囲い込みは難しいだろう。そうなってくると、川上のコンテンツ供給側を押さえるという戦略もあるだろうし、デバイス以外の何らかの魅力でユーザを囲い込むという戦略もあるだろう。このユーザー囲い込み戦略を採るとすると、ニコニコ動画の強みであるコミュニティ機能にはネットワークの外部性が働くから、キャズムを超えてしまえば圧倒的なポジションを確保できるかもしれない。まあでも、それだけでは万全の競争基盤とは言えないから、ニコニコ動画が長期的に成功するためには川上の方のコンテンツ供給をどう押さえるかという点も重要だろう。

ちなみに、右下の象限の版権コンテンツを配信し広告収入を得るというモデルは、地上波の民放のビジネスモデルそのものである。前の方で少し触れたが、この地上波民放がものすごい収益性と圧倒的なリーチを誇っていたのは、彼らのビジネス力によるものではない。彼らの力の源泉は、単に電波という限られた資源を独占しうる立場にいたというポジショニングにある。そういう意味で、参入が自由なインターネット上で版権コンテンツの広告モデルを確立しようとしたGyaoのビジネスはもともとリスキーな賭けだったのだ。Gyaoが圧倒的な競争力を確立できるとしたら、エクスペリエンスカーブ(経験曲線)をだれよりも早く右下にどんどん下りて行き、だれも追いつけないようなコスト競争力を身につけることができた時だったのだろう。しかしそうなる前に、著作権無視コンテンツ満載(当初)のYouTubeが参入してきて、Gyaoの野望は断たれてしまった。

以上、組曲『ニコニコ動画』をBGMに書きました。
・戦略「脳」を鍛える

ボストン・コンサルティンググループの日本代表である御立尚資氏が、定石を超える戦略の構想に必要な「インサイト」について解説した本である。この本を読んで最も興味深かったのは左右両方の脳を使って思考スピードを上げる方法についてである。右脳的な思考の必要性は以前に紹介したハイコンセプトでも触れられていたが、右脳の必要性とか使い方については本書の方が理解しやすい。

ハイコンセプトにもでてくるエピソードだが97年に行われたチェスの世界チャンピオンであるカスパロフ氏とIBMのディープブルーとの対戦の逸話が本書にも登場する。ディープブルーは14手先までの全差し手を調べて最善手を指す。チェスで1局面に可能な指し手は平均35通りあるので35の14乗という膨大な手数をひとつずつ全て検討するのである。人間が左脳のみを使って、同じように論理思考の積み上げだけでやっていたのではコンピュータに敵うわけがない。次に紹介されているのが将棋の羽生氏についてのエピソード。将棋の場合は、ひとつの局面で選択可能な差し手がチェスよりも遥かに多く、プロ棋士と互角に戦えるほどの計算力を持ったコンピュータはまだ登場していない。しかし、論理的な思考能力でコンピュータに遥かに劣る人間であるプロ棋士が数十手先まで読むことができるのはどうしてか、羽生氏が詰め将棋の超難問を解く際に脳のどの部分が働いているのか測定したのである。

頭の中に蓄積された定石を土台として、盤面をビジュアルイメージでとらえて「これだ」という手を仮説として右脳で導き出し、次に左脳で論理的に仮説を検証している。この思考スピードが並外れて速いのだ。

右脳を使うというのは何も絵がうまいとか、そういった使い方だけではないのだということを、今更ながらに認識した。
・反転―闇社会の守護神と呼ばれて

4月下旬のこと。「本の執筆をしよう!」ということになり、京都大学の近所にあるカフェにて、ナ・トワのTYおよびUKと僕の3人で構想について話し合っていた。結局その時は3人で話し合っても良いアイディアをひねり出すことができなかった。本を書くのに手っ取り早い方法は、自身の経験を書くことだが、僕らはその選択肢を採ることができなかった。“守秘義務”というのも大きかったが、UKの一言が全てを言い表していた。「僕らの経験を書いても面白くないよ。だって、僕らの人生にはドラマがないから」全くその通りだった。この瞬間、本の執筆計画は一旦延期となった。

さて、前置きが長くなったが、“ドラマのある人生”とは本書の著者、田中森一氏のような人生をいうのだろう。田中氏は、長崎の漁村で極貧の漁師の家に生まれる。中学の時は、お金がないために福岡行きの修学旅行にも参加できなかった。定時制の高校に入学し、そろばん教室で学費を稼ぎながら4年間かけて卒業する。大学受験をするために、大阪の予備校の学長に手紙を書いてかけあい、住み込みのバイトをしながら授業を受けさせてもらう。2年間勉強して岡山大学の法学部に入学すると空手部の活動に没頭した後、同棲相手の女性(後に結婚)に養ってもらいながら司法試験の受験勉強に専念し、在学中に1発で合格してしまう。合格後は検事になり、大阪地検などで実績をあげ、東京地検の特捜部に呼ばれる。東京地検特捜部では、エース検事として撚糸工連汚職、平和相互銀行不正融資事件、三菱重工CB事件などを担当する。バブルの真っ只中、87年に弁護士に転進し、その後はやくざの大物親分やバブル紳士などの顧問弁護士として大活躍する。その過程で古巣の検察内部に敵をつくってしまい、2000年に石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に逮捕、起訴されてしまう。本書の最後では、保身よりも許永中との友情を選択肢し、あえて不利な法廷戦術を採ったたため、実刑判決を受けてしまう。

田中氏が意思と才能を以って成功の階段を駆け上っていく爽快さと、周囲を彩る怪しい人物達のひとくせもふたくせもある人間性。それなりのボリュームがある本だったが、あっという間に読み終わってしまった。

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